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第885話
【星side】
ドクドクと、高鳴る鼓動が体に響く。
この1ヶ月間、オレは雪夜さんに会いたい気持ちをぐっと堪え、学校以外の時間は教習所に入り浸っていた。学科と技能、それぞれ規定の教習を受けて、仮免許、そして段階を踏み卒業検定に合格したオレは、最後のステージとなった免許センターで合否が出るのを待っている。
「星くん、そんなに緊張しなくてもいいのに」
「だって……」
オレの家から免許センターが遠いことを気にしていた雪夜さんは、仕事の都合をつけてオレを試験会場となっている此処まで連れてきてくれた。
数週間ぶりに雪夜さんに会えた嬉しさを感じる前に、オレは試験のことで頭がいっぱいで。オレが筆記試験を受けているあいだ、大人しく待っていてくれた雪夜さんにお礼を言う余裕もなく、オレは電光掲示板に受験番号が表示されるのを待つしかなくて。
「二者択一なんだから余裕だろ、お前どんだけ勉強したと思ってんだよ。星くんは、俺が免許取った時の数百倍勉強してっから。俺、試験勉強一切せずにここでテスト受けたし」
「雪夜さんは元々頭がいいから、だから試験勉強しなくても大丈夫なんですよ。オレはそうじゃないから、勉強しないと不安で不安で……」
「でもお前、卒検前の考査で満点とってんだろ?こんなもん、普通にやったら一回で受かるから心配する必要ねぇーと思うけど」
試験が終わってもガチガチに緊張しているオレの隣で、雪夜さんはのほほんとしながらオレと一緒に結果が出るのを待ってくれている。
雪夜さんや兄ちゃん、優さんや誠君のように、何も躓くことなく免許を取得出来る人もいれば、健史君や雪夜さんのお友達の浅井さんのように、何度も試験に落ちる人だっているんだから。
オレは、どちらになるんだろうって。
そう思うと、初めて受ける免許センターでの学科試験は恐怖でしかなかった。
「あの時はたまたま運が良かっただけで、今日の試験はあんまり自信ないんです」
仮免許の試験の時も、オレはものすごく緊張したけれど。これで落ちていたらどうしようって、そう思いながら待つ時間は永遠のように長く感じた。
そして。
「……あ、アナウンス入った。星くん、結果見てこい」
「でも……」
「いいから」
免許センター内で流れたアナウンス、それはオレの運命を決める音。待合所の椅子から立ち上がり、雪夜さんをそこに残してオレは恐る恐る電光掲示板の下まで歩みを進める。
「……あ、あった!」
ずらりと並んだ番号の中、自分の受験番号を見つけたオレは、一安心して雪夜さんの元に走り寄っていった。
「その様子だと、受かってたっぽいな。おめでとさん、星くん」
「ありがとうございます。あ、でも……今からまた免許発行まで時間掛かっちゃいますけど、雪夜さん大丈夫ですか?」
「俺ん時もその流れだったし、分かってるから大丈夫だ」
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