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第892話
【雪夜side】
「ユキちゃん、このベッドにしたら?天蓋付きお姫様スタイル、せいにはすっごく似合いそう」
「却下……ってか、なんで優は腹抱えて笑ってんだ。珍しいこともあるもんだぜ、お前がこんな顔して笑うなんて空から槍でも降ってくんじゃねぇーの」
「星君はともかく、雪夜がこのベッドで眠るのかと思うと可笑しくてな。俺のした想像が、予想以上の破壊力を持っていただけだ」
星くんと暮らす新しいマンションに星を連れていった日から1週間が過ぎ、新生活の準備を着々と始めている俺を邪魔する友人二名様。
今日は俺たち三人ともがオフなこともあり、優の奢りでランの店で飲もうと光から誘いを受けたのはいいのだが。集まった時間が思いの外早くて、俺たちは今、インテリアショップで時間を潰している。
「せいに黒のベビードールとか着せてさ、ベッドは真逆の白レースってヤバくない?」
「お前の頭がヤバいだけだろ、俺そういうの全く興味ねぇーからな」
「雪夜は、清楚な服装の方が好みだろう?露出を控えている方が脱がしがいがあるからな、その気持ちは共感してやるとしよう」
「えー、露出高くてもせいなら絶対可愛いよ?女物で生地が足りないから、どうやっても隠れないのに頑張って隠す姿とかさ……ねぇ、よくない?」
「よくねぇーよ、アホか。アイツはんな格好しなくても充分可愛いし、お前の妄想ん中の星くんが可哀想だからやめてやれ……まぁ、優の言うことは一理あるから否定はしねぇーけど」
さまざまなデザインのベッドが並んでいる場で、ベッドよりもソレに寝転ぶ星くんの服装について話すのはどうかと思うが。
「せいの制服姿を拝めるのも、あと少しになっちゃった……卒業したらせいはユキのところにお嫁にいくようなものだし、お兄さんは寂しいんだよ?」
「だからって変な妄想すんなよ、お前には王子専属の執事がいんだろ」
「まぁ、そうなんだけどね。この男を手放さなくていいんだって思ったら、優で遊ぶのつまんなくなっちゃって」
「どの口が言っているんだ?昨日だって散々遊んでやっただろう……まだ足りないのなら、今日の夜も付き合ってやるから覚悟しておけ」
絡まった糸が解けて、光と優も俺と星と同じようにこの先の未来を伴に歩んでいく決心をしたから。光の闇がなくなったことをきっかけに、王子と執事の関係性は少しずつ権力の奪い合いへとその形を変え始めている。
「何様のつもりでいんの?覚悟するのは優の方でしょ、もう今日のお仕置き確定したから謝るなら今のうちにしとけよ?」
「受けて立とうではないか、王子様」
……勝手にやっとけ、このバカップルが。
内心、そう思った俺はコイツらと同じ頭の持ち主だと周りのヤツから思われるのを避けるため、火花を散らす二人を寝具コーナーに置き去りにし、俺は独りでキッチン用品があるコーナーへと向かった。
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