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第896話

「……クソ疲れた」 「光ちゃんと優君、幸せオーラ漂う新婚夫婦みたいだったわね。お相手ご苦労様、雪夜」 三人でくだらない会話を楽しんだ後、手が空いたランも加わり話すこと1時間。その間、俺は王子と執事に新居の話で遊ばれまくり、散々楽しんだらしい友人二人は俺をおいて店を出ていった。 今は俺の定位置で、俺はランと二人きり。 店内であの二人と解散出来たことはある意味好都合なのだが、それにしてもあの悪魔たちは自由奔放過ぎて困る。 「星くんと二人で暮らす家に、なんでアイツらの寝室用意しなきゃなんねぇーだよ。アイツらホント頭おかしいわ……一部屋余るなら俺たちの部屋にして、なんて普通のヤツなら言わねぇーだろうが」 「でも、光ちゃんと優君はまだ一緒に暮したりはしないんでしょう?貴方と星ちゃんのことが羨ましく思えただけよ、可愛いもんなんじゃないかしら?」 「とりあえず、アイツらが俺の家で使う予定の食器はもう既に購入済みだからな。そのまま入り浸りでもされてみろ、ただのシェアハウスになっちまう」 男二人で暮らすだけでも、周りから見れば異様に思わることなのかもしれないのに。そこにあの二人が加わるとなると、俺は確実に周りの人間から頭がおかしいヤツ扱いされることになるのが許せない。 「あら、冗談を本気にしてどうするの。貴方たち三人ともに言えることだけれど、遊ぶ時間があるのは今だけでしょう?光ちゃんも優君もバカじゃないから、祝福の言葉として受け取ってあげなさい」 「分かってっけど……あの二人が家に遊びに来たら、星くん絶対歓迎しちまうもん。アイツら訪問客に喜ぶ星くん、お前も容易に想像出来んだろ?」 「まぁ、そうね。雪夜は星ちゃんの犬みたなものだし、星ちゃんが彼らを招き入れたら、貴方は大人しくあの二人に遊ばる運命を辿りそうだわ」 「んな運命なんて、死んでもイヤだ。月に一回程度なら星くんに免じて許してやっけどさ」 本当はアイツらに時間がないことも、冗談なことも俺はよく分かっている。新居となる場所で四人が集まることは、おそらくそう多くはないはずだ。 それが安堵の材料となり、そして寂しさの材料となる。だからこそ、アイツらが家に遊びに来る未来を俺は許してしまったのかもしれない。 「でも、本当に良かったわ。雪夜と星ちゃんも、光ちゃんと優君も……貴方たちの幸せを間近で見ることが出来て、私はとても嬉しいの」 光と優のことも含め、俺たちのことを気遣い見守ってくれていたラン。色々と報告が遅れてしまったことを申し訳なく思い、俺は微笑むランに視線を向けた。 「お前には心配かけたな、それは悪いと思ってる。けど、今日のアイツらのバカップルぶりで全部チャラにして」 「貴方は、私が嫌とでも言うと思ってるのかしら?安心なさい、最初からそのつもりよ」

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