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第903話

「星……舌、出してみ?」 「ん…」 「ん、上手」 にっこり微笑む雪夜さんに促され、オレは素直に赤い舌を覗かせた。そこに向けられる雪夜さんの視線が熱くて、オレは後からやってきた恥ずかしさに耐え切れそうにないけれど。 「ッ、ん…ぁ」 オレの舌先にポタリと触れたのは、故意的に雪夜さんの唇から零れ落ちてきた滴だった。自分でもなぜだか分からないのに、オレは少量のソレをこくんと飲み干して雪夜さんを見つめてしまう。 「もっと欲しいって、お前の眼はそう言ってんだけど。どうせなら、こっちで言ってくんねぇーの?」 満足そうな表情をしているのに、不満気でもある雪夜さんの声。言いたいけど言えなくて、淡く綺麗で逸らせない瞳にオレは釘付けになっていく。 でも、見つめるだけじゃダメだって。 雪夜さんの眼差しは、オレにそう訴えてくるから。 「ココで教えて、星くん」 「ふぁ…ん、っ」 ココ、と指摘された場所に雪夜さんの指が触れ、雪夜さんはその指でオレの舌を撫で始めてしまう。優しく、優しく、オレの咥内で遊ぶ雪夜さんの指は、舌を絡めて上顎を掠め、そしてゆっくりとオレに銀色の糸を見せつけた。 「あ、ちょっ…だめ、です」 「その言葉、俺が聞くと思う?」 オレが濡らした指先を咥え、ニヤリと笑う雪夜さん。雪夜さんはこんな時、オレの言うことを聞いてくれない。それどころか、雪夜さんの小さな仕草ひとつひとつがオレの身体を熱くしていくんだ。 「これだけじゃ足んねぇーから、俺はお前がもっと欲しい。星は、ちげぇーの?」 「ううん…もっと、雪夜さんがほしい」 「いい子、ちゃんと言えんじゃん」 どんなに恥ずかしくても、甘く揺れる雪夜さんの瞳には逆らえない。頬を染めたオレの姿が映るその瞳が鋭いものへと変わり、オレは息ができないくらいのキスに溺れていく。 「んっ、ん…ッ、んぅ」 柔らかい唇の感触、絡まる舌と注がれる液体。 ソレがどちらのものか分からなくなるまでキスを交わしていけば、静かな部屋に湿った音が響いて。 オレはもう、その刺激だけで充分くらいなのに。雪夜さんの指がオレの耳に触れて、響く音を塞いでしまうんだ。 「っ、あ…やっ、だぁ」 「聞こえねぇー」 お願いだから、オレの頭の中に濡れた音を閉じ込めないでほしい。オレがダメだと思うところは雪夜さんにとってのイイところだとしても、耳と唇の二箇所を同時に可愛がられると、オレの頭はおかしくなってしまう。 「ぅ、ん…はぁ、ゆき…やっ」 きゅっと閉じた瞼の中で、溢れる涙は瞳を潤ませて。オレがぼんやり目を開けると、そこには大好きな人の姿が飛び込んできたけれど。 「すっげぇーエロい顔してんね、星」 長い口付けの後、唇を離した雪夜さんはそう言ってオレの頬を撫でて笑った。

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