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第904話

普段はオレに忠実な愛犬さんなのに、こういう甘い雰囲気の時の雪夜さんは優しい狼さんみたいだ。 ガウって、本当に食べられちゃいそうな錯覚に陥るほどに……オレの首筋を甘噛みしていく雪夜さんの髪を掴んで、オレは溶けかけた頭でそんなことを考えていた。 「はぁ…っ、ん」 柔らかく触れる唇と、時折走る小さな痛み。 首筋に刻まれていく赤い痕も、そこに這わされる舌の熱さも。全てがオレだけに注がれていて、それが新たな快感を生む。 首筋につく痕は薄く、胸や太腿につく痕は濃い。雪夜さんのちょっとした心遣いに頬を緩めつつ、オレは漏れる声を抑えようと唇を噛むけれど。 「んぁッ、ン…やぁっ」 そうはさせてくれない雪夜さんは、オレの耳を舐め上げて囁いてくるんだ。 「声、我慢してるお前も好きだけど……俺のために鳴けよ、星」 「雪夜さ、あ…んッ」 「そう、その声でもっと鳴いて、俺を欲しがれ」 「ぁ、だめっ…それ、だめ…」 オレの弱いところをよく知っている雪夜さんに、きっと何を言っても通用しない。雪夜さんの声だけで、吐息だけで、こんなにも感じてしまうオレだけれど。一度この気持ち良さに誘われてしまったら、オレはもう引き返すことなんてできなくて。 「力、抜けてんぞ」 雪夜さんにしがみつくように回していたはずの手からは力が抜け、オレの手はソファーに落ちていく。でも、雪夜さんはすかさずその手を取ってくれて。ゆっくりと絡められる指先の感覚は、オレの心を安心させる。 耳から首筋に、そして徐々に下へと向かう雪夜さんの唇。気持ちよくて、でも少しだけもどかしい刺激にオレは眉を寄せた。 「もっと…して、雪夜さん」 何をどうしてほしいかは、よく分からないのに。焦らされているような淡い刺激に耐えきれないオレは、熱い眼差しで雪夜さんを見つめる。 すると、オレの身体がふわりと浮いて。 雪夜さんに抱えられたオレは、雪夜さんの膝の上に跨っていた。 「お前、コレ好きだろ?」 オレが着ている雪夜さんのパーカーを脱がしながら、そう尋ねてきた雪夜さんは素肌のオレを抱き締めてくれるから。 「好き、だって……ぎゅって、できるもん」 オレが素直に甘えた分だけ、雪夜さんはオレにたくさんの愛をくれる。それがとっても嬉しくて、もっと欲しくて……欲張りになった心と身体は、雪夜さんだけを求めて疼く。 「星、可愛い」 知らず知らずに揺れてしまうオレの腰を掴んで、幸せそうに微笑む雪夜さんはオレの胸に顔を埋めて。 「ぅ…はぁ、あっ」 「相変わらず反応イイな、お前」 「だって…ッ、雪夜さんがぁ…」 「……俺が、ナニ?」 分かってるくせに、わざと首を傾げてオレを見つめる雪夜さんは意地悪だと思う。でも、オレをこんなふうにしてしまうのは、いつだって雪夜さんだけだから。 「雪夜さんに、されてるから……気持ち良く、なるの」

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