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第922話

パーンっと、大きな音が弾けて色とりどりの紙が舞う。驚くなという方が無理な状況に素で間抜けな顔をしている俺は、一斉に掛けられていく声を聞くことしか出来ないけれど。 『お誕生日、おめでとうございますッ!!』 ランの店にいるのは、ランと星くん、そして何故か光と優までが勢揃いしていて。それぞれが放ったクラッカーからは小さな煙の匂いがした。 「……どうなってんだよ、コレ」 ありがとう、と。 先に感謝を告げるべきことなのは分かっているのに、現状を呑み込むことに精一杯な俺はそう呟くことしか出来ない。 「お前のために、子猫ちゃんが必死で考えたサプライズだ。ありがたく受け取ってやれよ、やーちゃん」 「兄貴……ってか、お前らまで」 「このタイミングを逃したら、みんなで集まることもなくなるからって。貴方のために、今日だけこのお店を貸し切りにしてほしいって星ちゃんに頼まれたのよ」 「雪夜、誕生日おめでとう……と、言いたいところだが。雪夜は本当にお兄さんとそっくりな顔をしているんだな、まるで一卵性双生児みたいだ」 「ユキちゃんのお兄さんって、すっごいエッチだねっ!上には上がいるんだなぁって感じ、質の高いユキちゃんみたい」 星が自ら飛鳥に拉致られ、そして此処に身を潜めていた理由はランの言葉で良く分かったが。光と優は俺の誕生日よりも、初めてご対面した飛鳥の容姿に釘付けのようで。 「やーちゃんのダチも、結構いい顔が揃ってんだな。白石雪夜の兄貴で長男の飛鳥だ、やーちゃんがいつも世話になってます」 「ッてぇーな、なんで俺もコイツらに兄貴と二人で頭下げなきゃなんねぇーんだよ」 挨拶なんてどうでもいいから、まずは星の元に行きたい俺の都合なんざ関係なく、飛鳥に髪を掴まれて光と優に向かい俺は無理矢理頭を下げることになった。 「同じ顔したイケメン二人が喧嘩してるのって面白いけどさ、今日のメインは兄弟じゃないからね?俺もせいとイチャつくの我慢してるんだから、さっさと本題に入ろうよ」 「綺麗な顔した兄ちゃんの言う通りだ。やーちゃん、お前は今日子猫ちゃんに渡す物があんだろ?」 「なんで兄貴がソレを知ってんだ……ってことは、まさかお前らも知ってんの?」 「そうよ、今日のサプライズをお互いに知らないのは星ちゃんと雪夜だけ。みんなを集めて貴方を此処に連れ出す企みをしたのが星ちゃん、星ちゃんと永遠を誓えるようにプレゼントを持っているのが雪夜」 「だからつまり、今日の雪夜の誕生日が二人のささやかなウエディングになるわけだ。二人のサプライズを利用した、ランさんとお兄さんからの逆サプライズってところだな」 サプライズがあり過ぎて、もう俺には何がなんだか分からない。それは、カウンター越しにいる星くんも同じで。俺は星と二人で、この現状を理解しようと頭を悩ませていた。

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