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第928話
ぐるりと一周、自室内を見渡して。
どこから荷物を整理をしていけばいいのか分からなくなったオレは、雨の中でもオレの家に来てくれる、ある人物を呼び出した。
「セーイ、独りで寂しくなっちゃった?」
「何それ……っていうか、何なのそのキャラ」
高校を卒業しても変わらない親友は、オレからの呼び出しを受けて家に来てくれたけれど。よく分からないテンションでオレの部屋に入ってきた弘樹は、ニヤニヤと笑いながらオレのベッドに腰掛けて。
「白石さんと王子、今日大学の卒業式なんだろ?だからセイが独りで寂しいんじゃねぇかって思って、元気づけようとしたら俺もよく分かんないテンションになっちった」
「……とりあえず、オレは西野君を尊敬するよ」
寂しくないと言えば嘘になるし、弘樹がこうして家に来てくれたのは単純に嬉しく思うのに。弘樹が漂わせている謎のハイテンションに、オレはついていけそうになくて。こんなバカな弘樹と付き合える西野君を本気で尊敬したオレは、心の声が口から洩れていた。
「なーんか懐かしいよなぁ、俺って昔は毎日のようにセイと一緒に遊んでたじゃん?会っても特にやることなんてないのに、それでも一人より二人いた方が楽しいからとか理由つけてさ」
「ああ、あったね。元々、オレと弘樹ってタイプ違うから遊びの内容とかもお互いに違ったりしてたのに。会って顔見てお喋りして、くだらないことで笑ってた気がする」
「今日みたいな雨の日には、よく二人でてるてる坊主作ってたよな。ティッシュ丸めて首のところを輪ゴムで縛って、そんでセイに顔描いてもらったりしてた」
しみじみとそう言って、オレの部屋を眺める弘樹。
部屋の片付けをするために弘樹を呼び出したはずなのに、オレは弘樹の隣に腰掛けると、やる気を失くしてクッションを抱き締めてしまうけれど。
「高校卒業したら、もうこのままさよならなのかなぁとか思ったりしてたけど。卒業してすぐにセイの家来てるから、俺らってたぶんこの関係まま続いていくんだろうな」
「確かにそうかも。オレはもう学生じゃないし、会う時間は減ると思うけど……でも、弘樹との縁はずっとずっと切れないままだと思う」
幼稚園からずっと一緒だった弘樹と、別々の道を歩むことになるのは承知の上で。それでもお互いに何かあった時には連絡を取り合うだろうし、きっと何かなくてもくだらないことで話をするんだと思うから。
「俺の初恋の人がセイで良かったって、その恋人が白石さんで良かったって……俺は本気で、そう思ってるからさ。恥ずいこと言うけど、俺はセイの一番の親友だから。これから先、もしも何かあった時には俺を頼ってほしい」
「それはお互い様だよ、弘樹だって何かあった時にはオレを頼ってほしいと思うもん。西野君とお幸せにね、その辺はオレより弘樹の方が心配」
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