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第930話
「星くんの部屋のベッドちっせぇーな、お前抱き締めてねぇーと俺落ちそうなんだけど」
「雪夜さんの家のベッドが大きかっただけですよ、一人暮らしでセミダブルのベッドだったんですもん」
「バーカ、今はダブルのベッドで独りで寝てんだぞ。俺がどんだけ寂しい思いしてると思ってんだよ、俺の方がバカみてぇーじゃん」
雪夜さんと兄ちゃんたちの卒業式も無事に終わって、オレが弘樹と騒いでいた日から数日が経過したある日の夜。荷物が減ったオレの部屋で、オレと雪夜さんはオレのベッドで抱き合って眠りに就こうかとしている。
オレより先に新居へと移った雪夜さんだけれど、オレがこの部屋から新居に移るのは明日だから。それなら荷物整理も兼ねて家に遊びにおいでと、オレの両親の計らいで、雪夜さんは今日1日オレの家にお泊まりしているんだ。
「なんか落ち着かないというか、オレ無駄にドキドキしちゃって寝付けそうにないんですけど……これはベッドが小さいからなんでしょうか、それとも明日から雪夜さんと二人の生活になるから?」
「どっちもなんじゃねぇーの、俺も色んな意味で落ち着かねぇーし。いつ、どのタイミングで、お前の家族が部屋に入ってくるか分かんねぇーしな」
部屋の電気は消えているし、兄ちゃんも両親も雪夜さんが家に来ることをとても楽しみにしていたから、オレと雪夜さんがイチャついていたところで、うちの家族はもう誰も驚くことはないんだけれど。
部屋にはオレと雪夜さんしかいないのに、この状況がなんだか気恥しく感じてならないオレと雪夜さんは、シングルベッドの上でお互いに身を寄せ合っていて。
「あ、そういやさ……お前の荷物の中に制服のボタンが二つあったんだけど、アレってナニ?」
昼間に部屋の荷物整理を手伝ってくれた雪夜さんは、思い出したようにオレにそう問い掛けた。
「アレは、卒業式の時に誠君と健史君にもらったんです。オレが思い出として取っておきたくて……って、そんなことどうでもいいんですよっ!」
「どったの、星くん?」
思い出したように問い掛けてきた雪夜さんに被るようなオレの思い出しぶりに、雪夜さんはまた始まったかって顔をしてオレを見て笑っている。
「健史君の弟君、えーっと、長谷部君って言えば雪夜さんも分かります?雪夜さんの教え子のお兄ちゃんが、そのボタンをくれた一人で、雪夜さんによく似た飛鳥さん行き着けのバーで働いてるのが誠君っていってボタンをくれたもう一人だったんですよ」
「……は?ってことは、あん時の長谷部の兄貴が星くんのダチってことか?」
「え、いや……あの時って言われても、オレにはどの時だかさっぱり分からないんですけど。でもたぶん、健史君の弟君が雪夜さんの教え子で間違いないと思います」
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