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第942話

「雪夜さん、お風呂も気持ちいい」 広々とした作りのバスルームは、安らぎと癒しの空間だ。バスタブもゆとりがあって、雪夜さんに背中を預けながら入浴しても問題ないのが嬉しい。 間取りが広くなると、こうも生活スペースが充実するんだって、今日はそれを実感してばかりいる。 「本当に、想像以上に良いお家です……こんなに素敵な物件、そうそう無いんじゃないですか?」 「まぁ、そうだと思う。都会から少し外れるから広さの割にそこまで家賃高くねぇーし、俺たちにとっては立地も良いからな」 「収納スペースも、ちゃんとありますしね……と言っても、オレの荷物少な過ぎてクローゼットの半分も埋まらなかったですけど」 二人で湯船に浸かり、ゆっくりと話すことはこのお家のこと。オレの荷物はほぼ寝室のクローゼットに収まっているけれど、思っていた以上に自分の荷物が少なくて、オレも雪夜さんも驚いたんだ。 「星くん、ミニマリスト寄りだからな。小物がちょっと多いだけで、服とか少ねぇーし」 「んー、私服は季節ごとに上下三着くらいあれば充分生きていけるかと……生活する上で必要な物は欲しいですけど、物が多くなると管理が面倒なので、最低限あればいいかなって」 「部屋着は俺の勝手に着るし、別にいらないかなーってコト?」 「うん。だって雪夜さんが着てる服は肌触りの良い素材ばっかりだから気持ちいいし、何より安心できるから」 オレが勝手に雪夜さんの部屋着を借りても、雪夜さんは怒ることがない。オレの身体の小ささをたまに笑われるくらいで、ワンピース状態のオレをいつも微笑ましく見つめている。 「可愛いからいいけど、客人がいる時だけは自分の服着ろよ……あんな無防備でエロい格好すんのは、二人のときだけにしてくれ」 雪夜さんのお家で過ごしていた時は、本当にオレと雪夜さん以外にあの部屋に入ることはなかったけれど。これからは、兄ちゃんとかも来客として訪れることを考えると、オレは雪夜さんの言葉にこくりと頷いた。 「あ、でも……それを言うなら、雪夜さんもですよ。雪夜さん、これからの季節は上半身裸で過ごすじゃないですか」 オレが雪夜さんの服を奪っているからとかじゃなく、雪夜さんがお家モード全開のときは服を脱ぎ捨てることをオレは知っているのに。 「そうでもねぇーだろ、服着てるって」 オレの後ろでクスッと笑った雪夜さんは、どうやら無自覚らしいから。目のやり場に困り果てながらも、やっぱりいつ見ても綺麗な肉体美だなぁって……オレがそんなふうに感じていることを、雪夜さんは気づいていないんだと思った。 「寒くなると着込んでくれるけど、春先から夏が終わるまでの期間は基本裸です。リラックスしたいときは特に脱いでますよ、自覚ないんですか?」 「あんまねぇーかも、気にもしてなかった」 ……どう考えても、無防備でえっちなのは雪夜さんでしょ。 「暑いから服着んのイヤ……って、いつもすぐ上の服脱いじゃう人は、オレのこと注意できないです」 「俺に自覚ねぇーのに、お前はそんなとこまでちゃーんと見てんだな……星くんのエッチ」 「えっちじゃないです」

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