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第946話
【雪夜side】
3年間の付き合いの間に、星がどんな言動を取るのか大方予想はつくようになった。ソファーで寝そうになることも、夕飯のカルボナーラも……夜になれば、俺からの誘いを拒まないことも。
しかしながら、星から持ち掛けられた提案は俺の予想の範囲外だった。
新居での初夜はどうやら、星が俺を気持ち良くしてくれるらしいから。滅多にない申し出に、俺は快く承知した。
けれど、星のあまりの可愛さに俺が大人しくできるワケもなくて。星の太腿を撫でて遊んでいたら、俺は本気の星に睨まれ、今に至る。
新居に来てから、事あるごとに気持ちいいを連呼していた星くん。そんな星は俺の上に跨り赤い舌を覗かせている。
「雪夜さん…気持ち、い?」
「ん、気持ちイイ」
身体的な気持ち良さとは少し異なるが、俺のカラダ中にキスを落としては舐め上げて、時折噛み付いてくる星が可愛くて仕方ない。
感謝の気持ちを現したいのか、かなり愛されていることは実感できるのだが……俺が本当に気持ち良くなれるのは、星が俺を感じているときだから。
一生懸命な仔猫の頭を撫で、どのタイミングでそのことに気づくのかを窺いつつ、とりあえずは星の好きなようにさせているけれど。
……受け身って、生殺しだ。
気を抜くと、空いた両手で悪さをしたくなる。星の髪に触れる右手で頭を抱え、自由な左手で星の右腕を掴んで。そのまま体制を入れ替えてしまえば、簡単に押し倒してしまえるのに。
俺を呼び捨てた星の気持ちを汲んでやりたい一心で、俺は仔猫からの悪戯に耐えているけれど。
「ッ…星くん、イタズラすんな」
「……雪夜さん、首筋弱い?」
一通り上半身に触れ、俺の反応を確認した後。俺の首を舐めて笑った星は、純粋無垢な瞳を向けてそう尋ねてくる。
「弱いっつーか……お前がまだ頑張りたいなら、ソレ以上は止めといた方がいい」
感じるところというよりかは、歯止めが効かなくなる箇所だ。首筋を舐めて刺激されると、俺は理性を手放し易くなるから。どこまで星がする気でいるのかは知らないが、このまま主導権を握っていたいのなら、ここらで止めた方が無難だ。
「でも、よさそうに見えますけど……ダメ、なんですか?」
俺から吐息が漏れることが余程嬉しいのか、星くんは俺の言葉を聞き入れずに首筋への愛撫を止めない。
噛まれる時は痛さが勝つのに、舐められると欲が勝つのは何故なのか……無性にムラッとするこの感覚を上手く説明できず、俺は息を吐いた。
「ダメかどうかは、お前が決めろ。ただ、俺はちゃーんと忠告したからな、どうなってもしらねぇーぞ」
優しく抱いてやる予定でいたのに、そうはさせてくれない恋人。
「オレがたまに雪夜さんの首筋にイタズラすると、雪夜さん必ず止めるじゃないですか。だから、今日は止めてあげないです」
……ああ、もう。
クッソ襲いてぇーっつーか、今すぐ滅茶苦茶にしてやりたいし、すげぇー犯したい。なんなんだ、この新手の焦らしプレイは。
「そう思うんなら、好きにッ…すりゃ、いいけど」
「んっ…あ、だめッ」
「もう無理」
薄れた理性を手放す選択をした俺は、星の耳を擽り北叟笑んでいく。
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