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第949話
「雪夜さんが昨日言ってた意味、オレやっと分かりました……もうお昼前じゃないですか、本当に朝昼兼用ご飯です」
少しだけ頬を膨らませつつも、キレイに出来たオムレツにご満悦な星くん。
朝食にオムレツを二人で作るという昨日の約束は、しっかりと果たされているのだが。新居での一夜を見越していた昨日の俺の言葉を、星は今頃になって理解したらしい。
「昨日、すっげー気持ち良かった……ありがと、星くん」
二人でキッチンに立ち、食事の用意をしている星を後ろから抱き締めて。怒られることを承知の上で、俺は星の耳を甘噛みする。
「っ……もう、バカ」
「バカでもアホでも好きに言えよ、良かったことは事実だからな」
「そりゃあ、オレだって……すっごく気持ち良かったですけど、二人してこんな時間まで寝ちゃうなんて、なんだか休日がもったいないです」
悪態を吐きながらも、ちゃんと肯定してくれる星くんが可愛い。俺の腕の中に収まったまま、星は出来上がった料理を皿に盛り付けていく。
「これから、仕事以外の時はいくらでも一緒にいれんだからさ、ゆっくり寝る日があってもいいんじゃねぇーのか?」
「んー、まぁ……そうかもです。雪夜さん、普段は眠り浅い人ですし……それに、こんなに幸そうにされたら、何も言えなくなっちゃいます」
そう言いつつも、同じように幸せいっぱいで微笑む星くん。可愛い恋人の頭をくしゃりと撫で、二人で一緒に食卓を囲めるように俺は出来上がった料理を運んでいく。
「雪夜さん、これもお願いします」
キッチンのカウンターから出されたスープカップと、ココット皿が二つずつ。それらをダイニングテーブルに並べ、あとは俺が淹れたコーヒーとカフェオレが入った揃いのマグカップも置いて。
手際良く調理後の片付けをする星に感心しつつ、星くんが対面キッチンを望んでいた理由が俺にもよく分かり、自然と笑顔が増える。
「……なんでオレ見て笑うんですか?」
俺からの視線に気づいたらしい星は、不思議そうに問い掛けてくるけれど。
「なんでって、星が可愛いから。お前と二人で生活できるって幸せを、思いっきり噛み締めてんの」
「もう、可愛いのは雪夜さんです……オレもそっち行くので、一緒にご飯にしましょ?」
照れくさそうにそう言う星は、向かいの椅子に腰掛けた。
切り分けられたバケットとロールパンがそれぞれカゴに収まり、サラダとオムレツ、ベーコンとウインナーがワンプレートに盛られている。スープカップにはミネストローネ、ココット皿にはフルーツヨーグルト。
見事なモーニングだが、時間的にはランチタイムだ。けれど、そんなことは気にせずに俺と星は両手を合わせていく。
いただきますと、召し上がれ……その言葉をお互いに言い合い、笑い合って。食事を始めた俺は、笑顔の恋人にこう言った。
「星、ありがとう」
俺の呟きに、星は温かな微笑みで返事をしてくれる。部屋が広くなっても、二人で過ごすこの穏やかな時間がいつまでも続いてほしいと……そう願わずにはいられない、俺たち二人の生活がこうして静かに幕を開けていった。
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