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第3話

風呂から出ると夕食が用意されていた。 「うまそう!修ちゃんの料理すき!!」 流星はいただきます。と言って豪快に食べる。葉月も食べるが流星と違いゆっくりと行儀よく食べている。 「こら流星、葉月ば見習え!ちゃんと行儀良く食べよる」 修に注意されても「だって美味しかっちゃもん」とガツガツ食べる。 そんな流星を修は嬉しそうに見ている。 「なあ、修ちゃん今年は俺子供組最後やけん楽しみ」 「来年は中学生やからな」 「うん、修ちゃんも子供時代からしよったったゃろ?じいちゃんが言いよった、あいつはのぼせもんやったって、俺も今じいちゃんに言われる」 「そうか、一緒やな」 修は嬉しそうに流星の頭を撫でる。 「葉月は去年見よったやろ?参加せんとか?」 「葉月はふんどし恥ずかしいっとって」 修にバラされて葉月は顔を赤くして俯く。 「ああ、葉月は女の子みたいやけん、変質者に狙われるかもしれんけん、止めた方が良かかもな」 「はあ?俺は?俺だってイケメンやもん」 葉月だけ可愛いと褒められてプクッと頬を膨らませる。 「じゃあ、今年も見に来るとか?」 修に聞かれた葉月は頷く。 「ふんどしは恥ずかしいけど、修さんと流ちゃんのふんどし姿はカッコイイって思うもん、見てるだけで楽しい」 葉月の言葉に修は笑ったのだけど、どこか懐かしそうで寂しそうで……。それに気づいた修は「どうしたの?」って聞いた。 「なんが?」 「今、なんか寂しそうなかおになったけん」 「……いや、懐かしいって思ってさ。昔言われたったい同じ事ば俺が楽しそうだから見ているだけで楽しいって、カッコイイ修ば見ているだけで楽しいって」 その言葉に「あー、なんね修ちゃん彼女が何かに言われたと?昔っからモテモテやったっちゃろ?じいちゃんに聞いたもん」 「そうばい!モテモテやったと」 修は笑ったが流星の質問には答えたてはいなかった。 「今年は盛大にやりたかねえ」 「うん!」 勿論、今年も楽しくやりたい。でも、修の盛大にやりたいという言葉には意味があった。 それを流星が知る由もない。 ◆◆◆ 「はあ、もう毎日雨ばっかやん」 また校庭を眺めながらにボヤく流星。 「流ちゃんは外で遊べんけん雨嫌いとやもんね」 葉月が隣に来た。 「うん、今日も修ちゃんとこいくやろ?」 「うん!行く」 流星と葉月はほぼ毎日、修の所に通っていた。 「なんやお前ら毎日一緒でもしかしてホモってやつやろ?」 真後ろから冷やかしの声。 振り向くと同じクラスの男子がニヤニヤしている。この男子は前に葉月をいじめていた子で流星に文句を言われてから大人しかったのだが最近またちょっかいを出してくる。 流星は無視を決め込んだ。相手にしても疲れるだけ。 「葉月、行こう」 その場を離れようとすると「なん?本当のことやけん、何も言い返せんっちゃろ?」と2人の行くてを塞ぐ。 「うるさかぞ!お前こそ、本当は葉月と仲良くしたかっちゃろ?仲良くしたかったら優しくしろよ、幼稚園児か」 アホだなコイツという顔で文句を言うと男子は図星なのか言い返されたのが腹たったのか流星をつき飛ばそうとしたがいち早く葉月が前に出て、流星の代わりに葉月が転んでしまった。 「葉月!!」 転んだ葉月を心配しながら流星は意地悪を行ってきた男子に掴みかかった。 ◆◆◆ 「本当すみません」 職員室に修が来ていて流星の担任に頭を下げていた。 「いや、先に手を出したのは向こうみたいで、見ていた女子達が流星くんは悪くないって言ってました」 「相手の子に怪我は?」 「ないです。ただ、葉月くんが転んだ時に足を擦りむいて」 「えっ?葉月怪我したんですか!」 修は驚く。 「いま、保健室です」 担任に言われて保健室に向かった。 ◆◆◆ 「えっ?修ちゃん何で?」 保健室に入ってきた修に流星は驚く。 「先生から電話あったったい。お前の父ちゃんと母ちゃん、仕事でいけんから俺に電話あった」 心配そうな顔の修は流星の頭を撫でる。 「葉月大丈夫か?」 ベッドに座る葉月にも声をかける。 「うん、大丈夫」 ニコッと笑う葉月。 「先生が2人とも帰って良かって言いよったけん、帰ろう、アイス買ってやる」 「ほんと?やったあ!」 アイスに1番喜んだのは流星だ。 ◆◆◆ 修の家でアイスを食べながら外を3人で見ている。 雨で外で遊ぶ事もできない。 「早う梅雨明けせんかなあ」 流星は灰色の空を見上げて恨めしそうな顔をする。 「流ちゃんね、学校でもずっと言いよると」 葉月が笑いながらに言う。 「流星は外が好きやもんな……でも、雨の楽しみ方もあるとぞ?」 「なん?修ちゃん」 「雨の風景ばみる!俺は結構好きぞ?雨の音とか黙って聞いとると癒されるし、雨に濡れる花とか綺麗やろ?」 修の言葉で「あ、ウツギの花」と葉月は花を指さす。 「うのはなくたし」 「へ?なんそれ?呪文?」 流星は聞き慣れない言葉にキョトンとする。 「卯の花はウツギの花の事でくたしは腐るって書く」 「えっ?腐るの?」 修の説明に驚いたのは葉月。 「たとえたい。長雨のたとえ、花が腐るほど雨が降る」 「僕……ウツギの花が腐るなら雨止んでほしい」 葉月はしょんぼりとした顔になる。つい最近、挿し木を貰ったばかりだから。 「だけん、例えたい」 修はしょんぼりする葉月の頭を撫でた。そして「今日は流星ば守ってくてたとやろ?ありがとう」とお礼を言った。 「あいつ、葉月ば転ばしてからくさ!!ほんと腹立つ!」 流星は思い出したのかプンスカ怒っている。 「今頃反省してると思うよ?」 「しとらん!あいつ、葉月にばっか意地悪してさ!葉月と仲良くしたいなら優しくすれば良かとに」 流星はグッと拳を握る。 「今度また葉月に意地悪したらくらすけん!」 流星は鼻息荒くに言う。 「くらすって……殴ったらいけんばい」 意気込む流星に冷静になるようにと修は言う。 「流ちゃん、僕強くなるけん大丈夫、僕だって流ちゃん守れるもん」 葉月は可愛く笑う。 「葉月の方が大人やな、よし、飯にするぞ」 修は立ち上がると2人を残して台所へ。 しばらくは2人で庭を見ていたのだけど、台所から大きな音がして2人は驚き顔を見合わせ、慌てて台所へと走った。 そこには修が倒れていた。 「修ちゃん!」 「修さん!」 2人はそれぞれ修の名前を必死に呼んだ。

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