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第4話

◆◆◆ 「あはは、驚かしてすまん」 病室のベッドの上、修は豪快に笑う。 腕には点滴されているのだが流星と葉月は元気そうな修を見てホッとする。 「もう!ビックリさせんでよおお!!」 流星は修のベッドの横にある椅子に座ってどんなに驚いたかを説明した。 修が倒れた時に流星は慌てていたが葉月が隣の家でに飛び込んで助けを呼んだ。 隣の人が直ぐに来てくれて救急車も呼んでくたし、流星の祖父や両親にまでも連絡してくれた。 「葉月が……隣の人ば呼んでくれたと」 「そうか、葉月ありがとう。ごめんなビックリさせて」 修は葉月を側に呼んで頭を撫でた。 「もう……大丈夫と?」 「うん、大丈夫ばい、酒の飲みすぎたい」 修がそう言った時に「本当、修は飲みすぎばい」と声がした。 「兄貴……」 病室の入口に流星の祖父が腕を組んで立っていた。 「じいちゃん」 「隣の山口さんにはさっき礼ば言うたけん、修も後でお礼言わんばぞ」 祖父はそう言いながら病室へ入る。 「うん、ごめん兄貴」 「まあ、よかばってん、……お前ほんの少し入院ばい」 「えっ?!」 驚きの声を上げたのは修ではなく流星。 「入院って何で?」 流星は少し不安そうに祖父を見る。 「こん馬鹿が酒ばっか飲みすぎるけん、肝臓を休ませる為たい!家に帰すと直ぐに酒ば飲むけん」 「本当?それだけ?」 祖父の説明に不安そうにするが「他になんがあるとか?コイツは殺しても死なん」と言われて流星は笑顔になった。 「とりあえず帰るばい!修の着替えとか取りに行かんばし、2人とも飯食うとらんとやろ?」 「うん」 流星と葉月は頷く。 「そしたらレストラン連れてってやるばい!修ば助けてくれたお礼たい」 「えっ!レストラン?ほんと?やったあ!!葉月、レストランってばい」 流星は両手を上げて喜ぶ。 「あー、よかなあ、2人とも」 修の羨ましそうな顔に2人は元気を取り戻した。 ◆◆◆◆ 「葉月は家に送ってやる」 レストランでたらふく食べた2人を軽トラに乗せながらに祖父が言う。 「ぼ、僕、もう少し流ちゃんとおる!修さんの着替えとか用意するの手伝う」 祖父を見つめながらにお願いをする。 「まあ、よかばってんがちゃんと母ちゃんに言えよ、心配する」 「はい」 葉月は祖父にOKを貰い嬉しそうに返事をした。 ◆◆◆ 修の家で入院に必要な物を探す。 着替えにタオルに……色々と探している内に葉月が押し入れから古いアルバムを見つけてきた。 この家に出入りしている流星なのだがそう言えば修の昔の写真を見た事がない。いや、あるのだが祖父が持っているアルバムではある。この家で見た事がなかった。 勝手に見てはダメだと分かっているが好奇心に負けてアルバムを開く。 「あ!昔の山笠!!」 アルバムを開くとモノクロの写真が沢山で、ほとんどが山笠の写真。 祖父も映っていて、山笠の衣装を着けている。 もちろん、若い頃の修もいる。 「やっぱ、修さんカッコイイね」 葉月の言葉に大きく頷く流星。 子供から見ても修はカッコイイ。水法被は素肌に着るので胸元チラリ。しかも、パーンと張っていてなんか巨乳っていう言葉が似合う。 写真をみていてふと気付く。修の隣にいつも同じ年くらいの人がいる。 雰囲気が大きくなった葉月みたいで可愛らしい。 女の子かな?と思った。 「もしかしてこの人かなあ?」 葉月が言う。 「何が?」 「修さんが花言葉教えて貰った人」 「花言葉?」 流星に聞き返されてあっ!と葉月は慌てる。秘密だった。 でも、花言葉の事は秘密ではないので花を貰った時の話をした。 「恋人……かなあ?」 葉月の言葉に流星は何故かドキドキしてきた。 「え!そしたらこの人とはどげんなったと?修ちゃん独身ばい?」 流星と葉月は顔を見合わせる。そして、他にも写真がないかと探す。 ゴソゴソとやっていると小さな箱を葉月が見つけた。 手のひらに乗るくらいの小さな箱。振ってみるとカタカタと音がした。 「葉月、それなん?」 「わからん……」 葉月の手のひらにある小さな箱をひょいと取ると開けてみる。 「指輪!!!」 2人の声が揃う。 「こら、お前らはサボって」 直ぐに祖父の声がした。 「じいちゃん!修ちゃんって好きな人おったと?」 祖父の側に走りよる。 「は?突然どーした?」 「指輪」 祖父に指輪を見せた。 一瞬何?と顔をしたが直ぐに思い出したのか「お前は勝手に色々と……」とため息をつく。 「ねえ?おったと?」 流星は何故か必死に聞いてしまう自分に驚くが……知りたいのだ。 「駆け落ちしようとした事ある……修には内緒ばい」 「えっ……駆け落ち?」 子供の流星にも言葉の意味がわかる。 「え!でも修さん」 葉月も理解したのが聞き返す。 「修は待ってたばったん相手が来んかったんよ」 その言葉で流星も葉月も凄く寂しくなって、黙り込んだ。

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