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第6話

床に落ちた音で2人が流星達の方を見て、青い顔で立ち尽くす2人に驚く。 「流星……お前」 祖父がこちらに近付いてきた。 「じいちゃん……なん……話よったと?……うそだよね?」 流星の声も身体も震えて今にも泣きそうで。 「親父、流星、場所変えよう」 流星の父親が周りを気にする。 「葉月くんもおいで」 一緒に居た葉月も連れて場所を変えた。 祖父から話を聞いた。 修が体調が悪く病院へ行ったら直ぐに検査に回された。家族は?とか聞かれて嫌な予感がした。 告知をしてくれる病院だったので修と修の兄と共に診断を聞いた。 癌だと言われた。 しかも夏までもつかどうか……今すぐ入院してくださいと言われたが修が拒んだのだ。 どうせ年だ。癌でなくてもきっと数年で死んでしまうのだから、それが早くなっただけ……タイムリミットを知っただけなのだから大丈夫。残りわずかなら好きな事して死にたい。 そう言われて好きにさせてきたと。 それを聞きながら流星はワンワン泣いて、葉月も。 祖父は流星と葉月をギュッと抱きしめてくれた。 「修ちゃん知っとらすとやろ?なんで……言うてくれんかったとよ」 祖父の腕の中で泣きながら聞く。 「そりゃお前がこうやって泣くけんさ、修はお前を大事にしとるし、泣かれると辛かやろ?」 確かにそうだとは思う。たとえ、聞いたとしても何もしてあげられない。医者じゃないのだから治してあげる事も出来ない。 ただ、泣くしかできないのだ。 その日は2人とも家へ帰るように言われた。 真っ赤な泣きはらした顔を修に見せるのは申し訳ないと祖父に言われたから。 流星は1人で自分の部屋に居たが泣いてばかりで何も考えられない。 修が居なくなる。 すごく怖い。産まれた時から一緒で。 山笠やどんたく、花火大会。家族旅行。 修と葉月と3人で糸島まで海釣りに行ったり、キャンプしたり本当に楽しい日々ばかり。 それが永遠に続くって無条件に思っていた。 そんな思い出を泣きながら思い出していたら部屋のドアがノックされて「流ちゃん……ぼく……」と葉月の声がした。 ベッドから起き上がりドアを開ける。 ドアを開けると葉月も泣きながら立っていて、とりあえず中へ入れた。 「お母さんとお父さんが京都に行ったから流ちゃんとこいけって」 葉月の両親が流星の家まで送ってくれて泊めてくれるようにお願いしてくれたのだ。 「京都?」 旅行なのか?とか思って聞いた。 「狸寺」 「狸寺?」 「お父さんが日本マニアでお寺とか色々好きで、僕が泣きながら帰ったから、流星のおじいちゃんが説明しくれて、そしたらお父さんが狸寺で癌封じのお守り買いに行こうってお母さんに言って」 葉月の父親はアメリカ人だが日本文化が大好きで色々と物知りだった。京都にある狸寺というお寺が癌を封じてくれると言われているのを知っていてお守りを修の為に買いにいくと、母親も大好きだった元担任の先生の為に神様にお願いいくと行って着いていったのだ。 ギリギリで新幹線に間に合うが帰るのが明日になるので流星の家へ葉月を連れてきた。 「僕も一緒にお願いするって言ったけど、流ちゃんが今頃1人で泣いてるから側に居てあげなさいってお母さんに言われて」 そうなのだ、葉月の両親の言う通り、もう神頼みしかないのだ。 何にでも縋りたい。 泣いてる葉月を見て流星は頭を撫でる。 凄く可愛く見えて。ありがとうって思った。 大好きな修の為に泣いてくれる。凄く嬉しい。 「修ちゃんの為に何かできないかな?」 流星は修の為に何かしてあげたくなった。いつも修には沢山世話してもらった。笑顔にもしてくれた。叱ってくれた。大事にしてくれた。お礼をたくさん言っても間に合わないくらいに。 「僕もそう思ってた……」 2人とも同じ考えで、ふと「指輪の人」と葉月が言葉にした。 指輪を渡そうとした相手は生きているのだろうか?もし、生きているなら修に会わせたいと思った。 でも……それはきっと無理だろう。 分かってはいる。けれど、独身でいたのは指輪を渡したかった相手をずっと好きだったからだ。 せめて、修がどんなにその人を好きだったか伝えたい。 きっと、それはエゴだ。分かっている。でも、してあげたい事が他に思いつかないのだ。 その夜は2人手を繋いで寝た。 2人とも凄く不安で。もしかしたら流星が居なくなるかも……葉月が居なくなるかも……と互いに感じたからかも知れない。 ◆◆◆ 次の日、2人で修の見舞いへ行った。 病室へ入ると修はいつもの笑顔。 「修ちゃん……」 モジモジして言葉をかけられない。なんて話して良いか分からないのだ。それは葉月も一緒だ。 少し沈黙の後に「聞いたっちゃろ?」と修に言われた。 2人は引っ込んでいた涙がまたじわりと瞳全体を濡らす。 「黙っとってすまんな」 流星と葉月はベッドの側に行って首を振る。もう既にポロポロと涙を零している。 「おいで2人とも」 流星は修の左側、葉月は右側でベッドに横になり川の字になった。 2人とも修に抱き着く。 そんな2人の頭をそれぞれ撫でながら「ありがとう、お前らがおってくれて、本当に楽しい時間ばもろうだぞ」と言った。 「生きてて良かったってな」 「修ちゃん、だったらもっと生きて?来年も山笠いこう?来年俺、中学生ばい?」 「そうやね、見たかねえ」 「じゃあ、頑張って生きようよお!今年の山笠も祝いめでたば一緒に歌おうよう」 そう言って流星はワンワン泣き出した。その声に釣られて葉月も。

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