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第10話
◆◆◆
「ちゃんと良い子で留守番しとけよ」
そう言って修と凪は学校へ行ってしまった。
「さてと、どっか連れて行ちゃろかい?」
豊が2人を誘う。
「仕事は?」
「今日は休みたい」
流星の質問に豊は答える。
断る理由もないので豊に着いていく事にした。
外に出てビックリ!本当に自分が居る時代と違うのだ。高いビルがないし、なにより「わあ!路面電車!!」と2人は路面電車に驚いた。だって、自分達が産まれた時にはとっくに廃線になってたのだから。
「なん?路面電車めずらしいとか?」
あまりのはしゃぎっぷりに豊に聞かれる。
「うん、だってないもん」
「えっ?そうなのか?」
流星の言葉に豊が驚いた顔をする。
「じゃあ、何に乗りよると?」
「バスだよ、それか電車」
「なんか普通やな」
豊は何を期待したのかガッカリしている。
街は流星と葉月が知っている街と全く違う。
ビルばかり立ち並ぶ風景に見慣れているからかなり新鮮だ。
「あ!お櫛田さん」
櫛田神社を見つけ流星ははしゃぐ。
周りの風景は若干違うが櫛田神社は自分が知っているそのまま。
「もうすぐ山笠よね?修ちゃん長法被着とったもん」
「お前も山笠好きとや?」
「うん、子供山笠しとる、修ちゃんが俺と一緒に前走りしてくれよった」
「そうか、そんな先でも修は山笠しようとな、本当に山のぼせばい」
豊は笑う。
3人で色んな所を歩き回った。
◆◆◆
「修、今日も行ってよか?」
ぼんやりと席に座る修に凪が話しかけてきた。
「よかよ」
「あの子達、ちゃんと良い子にしてるかな?」
凪は心配そうに言う。
「兄ちゃんが休みで家におるけん大丈夫やない?」
「……修はさ、信じる?」
凪は修の前の席に座り、向かい合うとそう言った。
「未来から来たって話?」
「うん」
「そげなわかやかやん、小説やあるまいし」
「でも、小学生が妄想する話じゃないっぽいよ?頭良すぎやろ?僕だって、あんなに空想できんもん」
凪の言葉に確かに……と修は思う。
色々聞き出すとかなりリアルに話していた。
ほんの先の未来の話。自分が70歳で、兄貴の孫と仲良く暮らしている話。
あんな子供が詐欺師なわけはないし、それに自分は貧乏で詐欺される程金はない。
自分を騙す理由がわからない。もし、騙しているのなら目的が全くわからない。
「あー!!考えてもわからん!」
「修ってちゃんと夢叶えてるんだね」
凪の言葉でえっ?と彼を見る。
「学校の先生だよ、修、なりたいって言ってるもんね」
「あ……」
確かに流星が言っていた。自分は学校の先生だったと。
それが本当なら嬉しい。ずっと夢だったから。
「じゃあ、僕は何してるんだろうね?未来で」
凪は修を見つめて笑う。
流星は凪の話はしていない。兄と自分の話をだけ。
でも、凪をみて凪って名前を呼んだ。じゃあ、凪を知っている事になるし、未来でも一緒なのかと嬉しくなる。
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