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第19話

「えー!見せて」 葉月と修はテンション高い。流星は祖母が指輪をずっとしているので知っている。 「だめだめ!まずはまちこちゃんに見せんと」 豊はニヤニヤしながら指輪が入った箱を上に上げる。 「高かったん?」 「当たり前やろ!貯めてた金とちょっと前借りした!そいけん、今月からおかずが少のうなる、すまん修、あと小遣いも……」 修の質問に元気に答えたけれど、最後の方は申し訳なさそうに言う。 「えー、なん言いよっとよ!そげんと気にせんとってよ!そいに、俺もちょっと小遣い稼ぎするけん」 「小遣い稼ぎ?」 「あー、変な仕事せんよ?牛乳配達とか、あと商店街の食堂の皿洗い募集しとったけん」 心配そうな顔の豊に修は慌てたように仕事内容を言う。 「そげんいっぺんにすっと勉強ができんくなるっちゃない?」 「それは凪に教わる」 「凪か……頭良かもんな、で?なんで仕事決めてきたん?」 「あー、もうすぐ凪の誕生日やし、あと……水法被」 「あ、そうやった古くなったって言いよったもんな、ごめん忘れとった」 豊は思い出したように言うと修に謝る。 「なんで謝るとよ?自分のやもん、自分でなんとかする」 修はニコッと笑う。 「凪兄ちゃん誕生日なの?」 葉月が聞く。 「うん」 「何あげると?」 今度は流星に聞かれて、何にしようとずっと考えていたが豊が指輪を買ったと言ったので指輪もいいなって思った。 凪を自分のモノにしたい。 自分達は男同士だから結婚という選択肢はない。祝福される事もないだろう。 でも、何か約束をしたい。 ずっと好きだった凪が自分のモノになるという奇跡を感じたい。 「まだ考えとらん」 口ではそう言ったが指輪にしようと思った。 「凪兄ちゃん遅くない?家遠いと?」 流星の言葉で修は掛け時計を見た。 確かに遅い。何時もならもう来ていてもいい頃なのに。 「迎えに行こうかな?」 修は立ち上がった。 「一緒にいく!」 流星と葉月も立ち上がる。 ◆◆◆ 凪はフラフラと歩きながら頭の中でさっき起こった事を嘘だと思いたかった。 断れるわけがない。なんで?なんで……?そればかり頭をグルグル回る。 「凪くん」 後ろから名前を呼ばれ、その声にビクッとなる。 自分を呼んだ声が社長のものだから。 ゆっくり振り返ると車が横付けされていた。 「どこいくんだい?」 「えっ……あの、友達の家……泊まるって約束してて」 どうして、ここにいるのだろう?帰ったのでは?そう考えて、自分の目の前に居る彼が怖くて仕方がない。 「送っていこう乗りなさい」 「いえ、あの、大丈夫です」 凪は一歩下がる。 「いいから乗りなさい。話をしたい」 低い声で言われた。何かされそうで怖くて逆らえない。きっと乗っても何かさせるかも知れないが、今逃げても追いかけてくるだろうし、家族に何かされるかも知れない。 「はい……」 凪は言われた通り、車に乗り込む。

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