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第21話

どうしてこの人は自分に覆いかぶさっているのだろう?と考え、されている行為がとても嫌な事だと気付いた時には身体中をまさぐられていた。 怖くて声が出ない。 ただ、震えるだけ。 そんな凪に気付き「ああ、怖がらせてしまったね」と言う。 「焦ってはいけないと思いながらもどうしても我慢がきかないな私は」 そう言いながらまだ身体を触っている。 「無理矢理抱くのも好きなのだが、君には色々と覚えて欲しいし、満足もして貰いたいからね、気持ち良い行為だとこれからじっくりと教えていくよ」 そう言って凪のシャツのボタンを閉めはじめる。 彼の言った事、された事で表向きは娘婿だが、本当の目的は社長の愛玩。 昔から気付いていたあの恐怖は気のせいではなかったのだ。 「ぼ、僕、ここで降ります」 凪はベルトを震える手でなんとか外し、ドアを開けて車から降りた。 「時々会おう」 凪の心を無視した言葉を言って社長は車を走らせ去って行った。 ほんの数秒前の恐怖を思い出しはきそうだった。そして、修に凄く会いたくなって震える身体を押さえて歩き出す。 ◆◆◆ 「あー、凪兄ちゃん」 子供の声がした。 電灯の下に3人の影。 修と流星と葉月だ。目の前に修が居る。泣きそうになりながら彼等の元へ。 「どげんしたとよ?遅いけん迎えにきた」 修が近付いてくる凪に声をかける。 「ごめん」 凪は泣きそうになるのを我慢して笑う。 「なんかあった?」 聞かれてううんと首を振る。 「飯食ってきた?」 「まだ」 「じゃあ、一緒に食べよう」 「うん!」 自分でも不思議だった。怖くて震えていたのに修の前では笑えるのだ。 子供達の前で笑って話せる。 ああ、そうか……怖い時や悲しい時の方が笑えるのか。凪はそう学んでしまった。 自分が養子だと聞いた時も普通に笑って話せた。 だって、泣いても叫んでも事実は変える事が出来ないから。 修の家へ着いて皆でご飯を食べる時も笑って色んな話を出来た。 「風呂入る」 と修が立ち上がり「凪も入るやろ?」と誘われた。 「うん」 返事をして凪も立ち上がる。 「修ちゃん達の布団、敷いとく」 流星が食器を片付けながらに言う。 「おー、ありがとう」 修は笑顔で礼を言い、凪と風呂場へ行った。 彼等が風呂場へ行った後、流星と葉月は後片付けの手伝いをする。もう、いつもの日課になってしまっている。 「じいちゃん、今日も一緒に寝よ?」 「じいちゃん言うなや」 メインで食器を洗うのは豊。その両隣に流星と葉月。 彼等は豊が洗った食器を布巾で拭いている。 「呼んで良か言うたやん」 「特別っても言うたやん?」 「一緒に寝てくれんと?」 「一緒には寝るたい」 豊にそう言われ、2人は嬉しそう。 「なあ、俺とまちこちゃんはどげな夫婦?」 「えーと、喧嘩せんよ?じいちゃんは女泣かす男は甲斐性なしやし、奥さんには笑顔でおってほしかろ?っていつも俺と父ちゃんに言う」 「さすが俺ばい」 豊は満足そうにニヤニヤする。 ◆◆◆ 「なあ、凪……なんかあったん?」 修は身体を洗いながら湯船に浸かる凪に聞く。 その言葉に心臓が止まりそうになる。 「なんで?」 なるべく冷静に答えた。声は震えていないか?自然に話せているか……緊張が走る。 「良く笑ってたけん……凪は何かあった時ってよう笑し」 修の言葉に泣きそうになる。こんなに自分の事を見ていてくれる。

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