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第25話

ふと、もしかして帰れないかも知れない。流星も葉月も少し考えてしまった。もし、帰れなかったら?修がどうなったかを知りたい。 目の前にいる修は若くてカッコイイけれど、年を取った修もカッコよくて大好きなのだ。 豪快でいつも笑ってて、優しい修。 今、修はどうしているのだろうか?心配しているかな? 「おわ!流星!!」 修が慌てて自分に近付いてきて抱き締めてきたから流星は驚いた。 「泣くな、な?俺らがちゃんと帰れる方法見つけちゃるけん」 抱き締められた理由は泣いているからかとやっと分かった。 泣いていると分かると突然に喉の奥が熱くなって苦しくなり、咳き込む。 「ほら、大丈夫だから」 修は背中をトントン叩いて落ち着かせてくれる。 「ちょっとウチおいで」 堂原が家へと招いてくれて、流星は久しぶりに修に抱っこされた。 抱っこなんて小学校の低学年までだから懐かしかった。 堂原の家でジュースを貰って落ち着いた流星。 横に心配そうに葉月が座る。 「流ちゃん大丈夫?」 心配そうに顔を覗いてくる葉月。彼が居てくれて気持ち的に助かっている。 1人だったらとっくに心折れていただろうから。 「うん」 返事をして葉月に笑って見せる。 「大丈夫だよ、2人とも何か方法あるはずだから」 凪に言われて2人は頷く。 「もし……帰れんかったらどうしよう?」 流星は最悪な事を考え涙目で修を見る。 「そん時はうちの子になればよかやん!」 そう言ったのは豊。 流星と葉月は驚いて豊を見る。 「ばってん、2人はきつかろ?」 堂原に言われて豊は「最悪な場合やろ?帰れるかもしれん」と言う。 「そうやね、じゃあ、葉月はうちの子になるか?」 堂原が葉月を見る。葉月はギュッと流星の服を握る。 「あー!2人ともウチん子でよかたい!俺も少し仕事して助けるけん」 修がドンと自分の胸を叩く。 「仕事?」 凪が仕事という言葉に反応する。先生になるんじゃないのか?という顔で修を見た。 「あー、ちょっとな新聞配達とか商店街の中の食堂の皿洗いばさするったい」 凪に言っていなかったので少ししどろもどろになる修。 「勉強は?」 「そ、そいもちゃんと頑張る」 「なんで仕事するん?」 「なんでって……その、」 凪への誕生日の贈り物とは言えないからどう言おうかと困っていると「水法被新調したかって言いよったけん修は」と豊が助け船を出した。 「水法被」 凪は修らしいと笑う。 「山笠やもんな。梅雨があけると夏で山笠がくる、未来の修も山笠で腰やられたって言うくらいやけん、この山のぼせは本物たいね」 堂原はそう言って笑った。 「山笠みたい」 流星が目をキラキラさせて修に言う。 「おー、もちろん見ればよかたい!」 「修ちゃんの若い時……えーと、今の修ちゃんの山笠の写真みたよ、凄いカッコよかった!じいちゃんも凪兄ちゃんもおった」 「じいちゃんはやめろさ流星」 豊は笑いながら言う。 凪兄ちゃんもいたという言葉で凪はピクリと反応する。いつまで、修の側に自分は居れるのだろうか? 「それ、今の修?それとも少し先?」 思わず聞いてしまった。 「んー、わかんない、年号書いてなかったけん、でも、今か、その次とか?」 流星は見たアルバムを思い出そうとしているがイマイチ年号までは思い出せない。 「凪、どーしたとよ?」 不思議そうに聞く修に「ほら、もしかしたら流星と葉月写ってるんじゃって思って」と誤魔化した。 「あ、」 そうか!と修は思った。写真にもし、写っているのならどの時代までいたかとか分かるかもなんて思った。 「えっ……でも、白黒やし、古い写真やったけん、でも、葉月と俺写ってたとか分からん」 流星はうーんっと腕を組んで考える。 あの時見た写真には修と凪、豊ときっと近所の人達。 「あ、堂原先生もおった」 葉月が思い出したように言う。 「あとは?」 「子供達も写ってたけど、意識して見とらんもん、だって、その時代に行くって知らんし」 豊に聞かれて流星はそう答えた。確かにまさか、その時代に行くなんて思わないから意識して見ない。 「まあ、そうたいね」 豊は納得してくれて、堂原も混じりあーだこーだと帰る方法を探るが結局、何も解決しなかった。 その夜は堂原の家で食事して行く事になった。 「またおいで」 と堂原に言って貰って流星と葉月は手を振って豊の家へ帰る。 ◆◆◆◆ 凪も修の部屋にまた泊まると言って2階へ上がっていった。 「修ちゃんと凪兄ちゃんほんと、仲良しだね」 隣に座る葉月に言う。 「僕と流ちゃんも高校に行っても一緒なら良かなあ」 「えっ、葉月の方が頭の良かけん……同じ高校いけると?」 流星は慌てる。 「えー、流ちゃんは僕と一緒嫌なの?」 葉月はぷくっと頬を膨らませて言うが次第に涙目に。 「えっ、ちょ、べ、勉強するけん」 流星は葉月の涙に弱い。 「おー、それはよかたい!もし、帰れんやったらこっちでの生活に慣れんばけん、まずは勉強するや?」 豊が2人の会話に入ってきてきた。 「ここの家におってよかと?」 心配そうに流星は聞く。子供にだって、自分達が増えた分お金がかかると知っている。 豊は社会人だけど、修はまだ高校生で子供。心配になる。 「よかばい?気にするな」 豊は流星と葉月の頭をくしゃくしゃ撫でる。

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