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第26話

その夜も豊かと川の字になって寝る事にした。 「とりあえずはこの時代ば楽しめ」 豊に言われて流星と葉月は頷く。 「うん、山とか川があるけん凄か!じいちゃんが昔はホタルがここら辺飛びよったって言いよったとは本当やったね」 流星が興奮しながら言う。 「えっ?もう飛びよらんとか?」 「うん、周りはアパートとか建物ばっかりやもん、カブトムシとかも採ってたって……いいなあ」 「なら、今度連れて行っちゃる」 「ほんと?」 流星と葉月は物凄く喜んだ。 「うん、そいけん、元気だせ」 豊は流星の頭を撫でる。 「ありがとうじいちゃん」 流星は安心して眠る事ができた。もちろん葉月も。 ◆◆◆ 「なんも解決出来んかったね」 凪は残念そうに言う。 「焦らんで良かと思う。帰れんなら流星も葉月もうちの子になれば良かし」 「……そうだね」 寝転がっていた凪は起き上がると修の上にいきなり乗った。 「凪……?」 馬乗りになられた修は戸惑いながら顔が赤くなっている。 「修、顔赤い」 「凪がいきなり上にくるけん」 「どんな感じなのかな?って」 「何が?」 「見下ろされる感じってさ……修が凄く可愛い」 「バカ……」 可愛いに照れる修。 修は手を伸ばすと凪を引き寄せて胸の上で抱きしめる。 「声……我慢しろよ?」 修はそういうと凪を引き寄せてあっという間に組み敷いた。 「修でいっぱいにして」 凪の言葉に修は口付けを落とし、愛撫を繰り返す。 互いに服を脱ぎ、身体を重ねる。 ◆◆◆ 広場で手がかりを探そうとして何も手がかりがないまま、数日経った。 流星もあれから泣く事はなかったが心配ではある。 「雨だね修」 窓からぼんやり外を見ていた修に凪が話しかけてきた。 「梅雨やもんなぁ」 「卯の花腐たし」 「は?」 凪のいきなりの言葉に修はキョトン。 「長雨のたとえ。長雨が卯の花を腐らせるって意味」 「えっ?長雨になったら卯の花腐るとなら凪に貰ったうつぎの花やばかやん」 凪の言葉に焦ったように修は言う。 「たとえだってば」 あまりの焦りように凪はクスクス笑う。 「何だよ、笑うなよ」 拗ねた顔の修も可愛くて凪はまた笑う。 「凪は笑い上戸やけんな」 仕方ないと修も笑う。その後「あ、今日は食堂寄るけん」と付け加えた。 「あ、そっかじゃあ、今日は帰る」 凪は修の家に入り浸っており、流石に悪いなと思っていた。でも、帰りたくはない。 「夜でも良かけん来たら?」 「そうやね」 そう言って途中で別れた。 雨が酷くなり凪は急いで家へと急いだ。その途中「凪くん」と聞きたくない声で名前を呼ばれた。 心臓が一気に動きだし、ドキドキとしてくる。 恐る恐る振り返ると社長が車に乗って窓から顔を出している。 「濡れているじゃないか風邪を引く、送っていくから乗りなさい」 「いえ、あの、もう着きますから」 凪は後ずさる。 「いいから早く」 少し命令口調に取れる声質にビクッとなる凪。拒否権はないと言われているようだ。 凪は後部座席のドアを開けて仕方なく乗り込んだ。 「後ろ姿を見つけてね」 なんて言っているが社長の会社はもっと離れた場所だし、家もこちら方面ではない。明らかに待ち伏せされている感じがした。

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