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第28話

◆◆◆ 「修、上がって良かぞ」 食器を洗う修に大将が声をかけてきた。 「もうそんな時間?」 「そうばい、修は仕事早いけん助かる」 大将に誉められ修は嬉しそうな顔になる。 「ばってん、修は裏方より表が良かっちゃなかろうかって母ちゃんと言いよるとさ」 「えっ?なんで?」 大将が言う母ちゃんとは大将の奥さんの事。夫婦で切り盛りをしている。 「修は良か男けん女性客が増えるって、ここはどーしてもむさくるしいオッサンとか男子学生しか来んけんな」 「はあ?俺、良か男やないけど?」 キョトンとする修。なんせ、女の子にキャーキャー言われた事がないし、恋文も貰った事がないのだ。 「なん、自覚なかとや?修が山笠出るとお姉ちゃん達がキャーキャー言いよるばい?」 「はあ?水かかるけん、悲鳴上げよるだけやないと?」 修はエプロンを脱ぎながら言う。 「修……もったいない男やな」 ハア……とため息をついて大将は修の目の前に袋を出す。 「余った惣菜たい、豊と食え」 「え!!良かと?助かる」 修は喜んで受け取ると「お疲れ様と言って店から出た」 「修……」 凪の声がして、声がする方を見ると凪が修を見ている。 「おー、凪ー!これ見てみぃ、大将にもろうた、一緒に食べよ」 凪に駆け寄る。 「うん」 凪は元気なく答える。 「なんか、元気なかね?」 修は凪を心配しながら家へと向かう。 色々と話ながら歩くが凪が空返事みたいで気になる。 「どーしたと?おばちゃんと喧嘩とかしたん?」 「修……」 「うん?」 「気持ち……わるい……」 凪はその場に座り込んだ。 「えっ、凪!」 修は驚き凪に近寄る。 ◆◆◆ 怖くて、心の中で修の名前を呼んでいた。 社長に押し倒され、身に着けているものを全て剥ぎ取られ、全裸にされ身体を弄ばれた。 両足を開かされた時にやられてしまうと覚悟した。 でも、玄関で「凪帰っているの?お客様?」と母親の声がして、社長から解放された。 ホッとする凪に「少しづつ味わっていくからな、楽しみは取っておくんだ私は」と言われた。 今日、逃れても少しづつ、汚されていくのだ。 それが怖くてたまらない。 ◆◆◆ 「凪兄ちゃん大丈夫と?」 流星と葉月はオロオロしながら台所で豊に聞いている。 戻ってきた修が凪を背負っていたのだ。 豊が慌てて堂原を呼びに行き、いま診察中なのだ。 「風邪かもなぁ、風邪ならお前達は凪の部屋にいくなよ?伝染るかもしれん」 「やだ!」 豊に言われたが流星は首を振る。 「やだでもだーめ!」 豊がそう言った時に修が台所へ来た。 「凪は?」 「風邪の引き始めげな……雨に濡れてそのままやったみたい」 修は堂原に凪は大丈夫だと言われてやっとホッと安心したのだ。 「凪は寝とる?起きとるならお粥とか作るけど」 「薬で寝とる」 「そうや……じゃあ、明日やな」 「兄ちゃん、流星と葉月は俺の部屋か兄ちゃんの部屋に寝かせてよ、風邪の伝染る」 「そうやね」 「えー、心配やもんー嫌だ」 駄々をこねる流星。 「流ちゃん困らせたらダメ!それに僕達が横でうるさくすると寝れないと思うのよ?」 葉月は冷静に流星を説得をする。 葉月に言われて確かにそうだと思う。 「凪兄ちゃんは誰が見ると?じいちゃん?」 「じいちゃん言うなって!」 「俺が見てるよ」 流星の言葉に修が申し出て、流星達は結局、豊の部屋で寝る事になった。

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