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第29話
◆◆◆
冷たいものが額に当たり凪は目を開けた。
「ごめん、起こした?」
心配そうな修の顔が視界に入る。
ここって……凪は修と会ってからの記憶が無くて周りを少し見て彼の家だと気付いた。
「僕……どうしたと?」
「会った後に気持ち悪いって言うてそのまま」
「そっか……ごめん」
「ううん、風邪の引き始めってさ、まだ眠れるけんゆっくり眠れ」
修の手のひらが額に当てられる。
「ずっと居てくれたと?」
「うん。ずっとおるけん眠れよ」
「修も一緒に……」
凪は修に手を伸ばす。
修はその手を掴むと布団に入る。
「修……ぎゅうってして?」
凪のお願いに修は抱き締める。
修の腕の中は落ち着く。嫌な事を忘れられる。ずっと修の腕の中に居たい。家に帰りたくない。
家に帰ればきっとまたアイツがくる。いつやられるか分からない。今日だって母親が帰って来なかったら危なかった。
いっそ、逃げたい。
でも、逃げたら迷惑かかる。修にも会えなくなる。修に会えないのが1番嫌だ。
胸に顔を埋めると修の匂いがする。
彼に話てしまおうか?話したら助けてくれる?
きっと修なら助けてくれる。それが分かっているから言えない。
修に迷惑がかかる。もちろん豊にも。
修に想いが伝わり幸せだったのに。彼以外には触られたくないのに。
自分の未来はどうなっているのだろうか?
流星達に聞いたら分かるのかな?当然みたいに側に居ると思っていたけれど。
でも、凪と自分を見て名前を呼んだのだから知ってると思う。
朝になったら聞いてみようか?
凪はそう思いながら目を閉じた。
◆◆◆
朝、いい匂いがして凪は目を開けた。目を開けて直ぐに修を探す。隣に寝ていた彼が居ない。
起き上がると「あ、凪兄ちゃん」と葉月が凪の名前を呼びながら部屋に入ってきた。
「大丈夫?」
心配そうに聞いてくる。
「うん」
と返事をすると安心したような顔。
「修は?」
「修さんならお粥作ってる」
お粥……ああ、このいい匂いはお粥かと凪は思った。
「起きたって教えてくるね」
バタバタと葉月は元気良く走って行った。
しばらくすると修がお粥と薬と水をトレーに乗せて運んできた。
「食欲ある?」
「うん」
修が作った物なら食欲無くても食べるつもりだ。
修はトレーを置くと凪の額を触る。
「良かった下がってる」
ホッと息をつく修。彼はお粥をつぎ分けると「食べさせちゃろか?」とニヤニヤする。
「うん」
返事をすると自分から食べさせると言った癖になんだか照れていて可愛い。
「修、早く食べさせてよ?」
照れているのが分かるからわざとそう言う。
修は照れながらもスプーンにお粥をすくい、自分の息をかけて冷ますと凪の口元へ運ぶ。
凪は躊躇なくそれをぱくりと食べる。
凄く美味しい。
修は料理が美味いからお粥も美味しいのかと感動。
「美味しい」
ニコッと笑うと修は嬉しそうな顔をした。
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