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第13話
そろそろテストが近づいてきて、クラス中の雰囲気もまさにそれを意識して講義中ずっとお葬式のような沈黙が流れていた。
俺も既に店長にはテスト期間とそれの1週間前から休みを頂いているのでここのところは勉強漬けになっている。というのは何より天文学部は元からほかの学部より必修の授業が多く、テストもまた多い。恐らく理系の学部だったらトップを争えるほどの課題量なんじゃないかと思う。
『テスト期間頑張りましょうね。』
数日前に浅葱から告白されて、おまけにその日に家も泊まった彼とはとても健全なことに何も起こらなかった。というのは自分がさっさと寝てしまったからというのもあるが、それでも目が覚めたところで彼に「別に抱いてくれてもよかったんだけど。」と言ったらやけに真っ赤な顔でギュッと抱き締めてきたのみだ。違う、そうじゃない。それもまた可愛かったけど。
それからというものの、彼から以前にも増してメッセージやら電話が来て本当に恋人が出来たような気分だった。
テスト期間に入るから忙しくなって返事ができないのは俺も彼も同じで、数時間前に浅葱から届いたメッセージの返事を送ったその数時間後に彼から再び返事がくるといったようなやり取りを繰り返している。思えば俺も1年生のときは今よりも忙しくて本当に死にそうだった気がする。完璧に大学生を舐めていた。
正直会えなくて少し寂しいとすら思っている自分がいるが、これもあと数日の辛抱だ。
よし、と自分の気持ちを切り替えてから俺はまた広げた教科書とノートと睨めっこしてテスト勉強に励むことにした。
*
「きっづー!みっつー!テストお疲れ!」
教室を出て真っ先に人の名前を馬鹿らしく呼びながら駆け寄ってきた松来に、木津と二人で顔を見合わせてから無視するように歩き出す。「え、待って、何で?」「馬鹿が伝染るからどっかいけ。まだテスト残ってんだろ。」「木津に同意で。」待って酷くね?と文句を言いながらも後ろについてくる松来だが、俺は次のテストの場所はどこだったかななんて思いながら参考書を取り出すと、ふとエレベータから降りてきた人物に肩を軽く叩かれた。
「美津さん。」
その人物というのは浅葱で、彼はどうやら次のテストはこのフロアの教室で受けるらしい。「調子は?」「まあまあです。けど、やれることはやったので。」そっか、と言ったものの、俺はというと本心はどうか彼もいい結果を出してくれと願っていた。まぁ浅葱は頭悪くないみたいだし、浅葱のことを知ってる木津によるとむしろ賢い方に入るらしいからそれほど心配はしていない。
「僕、次ので最後なんですけど美津さんは?」
「俺も。終わったら連絡するから。」
そんな会話が終わるのと同時に上行きのエレベーターがやってきて、浅葱はまた丁寧に俺だけじゃなくて木津と松来に挨拶をしてからそのまま見送ってくれた。エレベータ内では「浅葱とかなり仲良くなってんじゃん。」と木津に言われたけど。
最後の科目は自分の最も不安な科目だっただけに何度も問題を見直したり解き直したりとしていたおかげで提出をするのがかなり遅くになってしまった。木津と松来は既に帰っていて、教室に残っているのは自分の他に僅か数人しかいない。一番前にいる教授にテストを提出してから教室を出るとそこには浅葱の姿があった。
「え、何、ずっと待ってたの?」
「お疲れ様です。」
浅葱は読んでいた本を閉じてからこちらに近づき、それからそんなに待ってないですよと言ってくる。嘘なのはなんとなく分かった。…まあ、連絡するとか言っておきながらこんな遅くまでかかった自分が悪いな。既に外はもう夕暮れになっている。
「この後どうします?どこか一緒にご飯でも食べますか。」
「あー…うん、それでもいいけど。」
俺の言葉に浅葱は少し頭を傾げてどうしましたかと聞いてきた。いや、なんていうか、ここテスト勉強している間に考えていたことがある。少し躊躇ったものの、浅葱が答えを待っているため俺は少し息を吐いてから彼の目を見て言った。
「浅葱の家に行ってもいい?」
「…へ。う…うちですか?」
意外にも抜けたといった反応をした彼は少し黙り込むなりようやく理解したのか「は、はい、いいです。」と言ってきたがその顔が少し赤い。こいつ、俺と一緒にいると赤くなってばかりじゃないか?なんて思ったがそれは昔の自分も同じだった気がする。
浅葱と二人で大学を後にして電車に揺られながら彼の家へと向かう。いつもの分かれ道で真っ直ぐ行けば自分のマンションまで着くが、通ったことのない右の道を曲がった。彼の住んでいる場所も静かな住宅街にあるマンションで、エレベータに乗って彼の部屋がある階まで向かう。変に口数が少ない彼を少し不思議に思って「恥ずかしい?」と聞けば「当然じゃないですか。」と言ってきた。なら最初からそう言えよ。
案内されて入った彼の部屋の中はうちよりも少し広めのお洒落な空間で、モデルの部屋はやっぱり綺麗な訳かとまた一つ偏見が自分の中に染み付いた。黒いソファーに座らされ、彼は飲み物をコップに注いでから自分もそのまま隣に腰がけた。
「物とか少ないんだなぁ。スッキリしてる。」
「必要なものしか置きたくないんですよね。それでよく殺風景とか言われます。」
時刻は午後6時。そろそろ晩御飯を作ってもいい頃だが、さっきから緊張なのかほとんど何も話さない浅葱に俺は少しイライラしていた。「そんなに緊張してるなら帰るけど。」そう言ってやれば彼は「え、す、すみません。」と謝ったもののまだ緊張がほぐれていない。
俺からすれば本来は緊張しているなんて可愛いとか思うべきなんだろうが、こうも目の前で黙り込まればなんだか部屋に行きたいと言ってしまった自分が馬鹿らしく感じる。これならいっそ外食してバイバイした方が良かったかもしれない。というか寝不足で眠いからイライラしているのかもしれないけど。
「…なんていうか、ダメですよね、こんなんじゃ。」
ため息をつきながら自分の頬をペチペチと叩いた彼はそれからやけに真剣な顔で真っ直ぐどこかを見据えてからこちらを見て困ったように笑う。その笑い方、本当に困る。
「本当はもっと余裕のある感じで美津さんに似合う人になりたいんですけど…自分の部屋に美津さんがいるのは心臓に悪いです。」
「お前、結構普通に俺の部屋に来てただろ。」
「美津さんの部屋に行くのと自分の部屋に美津さんがいるのは違うものですよ。」
ようやく緊張がほぐれたようで、あはは、と笑う彼を見て俺はようやく息をつき、それから俺は彼の肩に頭を預ける。彼は当然のように何か分からなくて「美津さん?」と名前を呼んできたが俺は無視することにした。「眠たいですか…?」「少しだけ。」「じゃあ寝室に行きます?」そう聞いてきた彼に俺は「誘ってるつもりで言ってる?」と意地悪に聞いてみるも、浅葱は「だから緊張してました。」と言ってきた。先を見越してたなんて聞いてない。
彼の寝室もやはり家具とか少ないんだろうかと思えば本だけはたくさんあるようで大きな本棚が3つある。それも全てぎっしりと本が並べられていてよほど好きなんだなということを思い知った。窓際にある彼のベッドに横になると彼の普段つけている香水の香りが身体を包んだ。浅葱はそんな俺の横に腰を落とし、そっと頭を撫でてはやけに優しい目で見つめている。
「…待って、本当に寝そうになる。」
その優しい手に撫でられ続けると次第に瞼が重たくなり、俺は彼の手を止めさせてからそう訴えた。「キス、して。」彼は俺の言葉にコクリと頷き、それから顔を近づけながら唇を重ねる。軽く触れた彼の唇は柔らかくて何かリップでも塗っているのか少し甘い気がした。口を一度離されてまたキスをしてくるのかと思いきや浅葱はそのまま俺を抱きしめながら枕に顔を埋めた。
「どうしよう、幸せすぎて死んでしまいそう…。」
「え、おい、な…泣くなよ。」
少し震えている彼の声に動揺してその背中を撫でるも、顔を上げた彼はほんの少し涙が滲んでいる。キスしただけで幸せとか乙女か。
それから浅葱は軽いキスを繰り返しながら次第にそれが深くなり、やがて舌を絡めてきた。そんなキスを何回かしたところで彼は俺のシャツに手をかけ、ボタンを外していく。その手は少し震えていて、演技とかではなく本当に緊張しているのが伝わる。そんなに緊張されたらこっちまで緊張してしまうじゃないか。
彼の指が俺の乳首に触れ、何度か指で軽く擦られただけですぐに硬くなったそこを彼はそっと舌で舐める。ぺろりと舌のザラザラとした部分で舐められて思わず身体がビクリと震えたが、彼は少し不安に思ったのか様子を伺いながら控えめに舐めてきた。
それがなんだか焦れたくて、もう少し強くしてもいい、なんて言ってみたがそれを言った途端に彼はキツめに乳首を吸い上げる。思わず飛び出そうな声に自分の口に手を当てて飲み込むも、彼が吸いながら舌先で転がすたびに俺は足をジタバタと動かしてしまった。やばい、気持ちいい。
下半身に熱が集まり、少しずつ硬さを増していく陰茎を彼はズボンの上からそっと手に触れてくる。「…ここ、辛そうですね。触っていいですか。」「なんで…聞くんだよ。」胸元にある彼の頬を本当に軽くペチッと叩いてやった。彼は少し照れながら笑って、それから一度身体を起こすと壁にある電気のスイッチに手を伸ばして部屋を暗くする。気遣ってくれたのだろうか、別に構わないのに。
浅葱は俺のズボンのベルトにカ手をかけて外してからズボンのチャックをおろす。一気に下着まで脱がされ、冷房の効いた部屋の涼しさに少し震えたが彼は俺の陰茎をそっと握るなりジッと見つめている。暗い空間に目がまだ慣れてないものの、なんとなく目線がチクチクと刺さっているのに気付いた俺は「同じ物ついてるのに何見つめてんだ。」と言いながら彼の腕を握った。
「あ…違うんです、その、舐めたこととか無いので痛くしたらどうしようって。」
まるで昔の自分だなぁ、なんてぼんやり考えながらも俺は彼の腕から手を放して「痛くしてもいいよ。」と言った。彼はその言葉に「痛くしたら殴ってください。」と言ったが、根元の裏側から裏筋まで一気に舐め上げられ、完璧に気を抜いてた俺は「ぅあ、」と情けない声が口から零れる。
「…う、…ん、ん、ッ」
待って、こいつ痛くしたらどうしようとか言いながら何気に上手くないか?軽く5回ぐらいはガブリと噛まれるんじゃないかと覚悟したのに。
陰茎を根元まで咥えられながら舌で包むように舐められ、上下に動かす。それが止まったかと思えば今度は亀頭だけを咥えられて溢れ出る先走りを吸い上げては尿道を舌先で舐めてきた。舌が尿道を何度も撫でるように舐めてきて、思わず浅葱の髪を掴んだ。
「ちょ…、浅葱、待って…それやばいッ、」
一瞬だけ口を止めた彼だがそれが止めてほしいというものじゃないということを理解すると直ぐにまた刺激を与えてきた。やばい、イきそう。
なんとか今の今まで声を抑えてきたが、その刺激にはとても長い間は耐えられない。
「あ、あさぎ、マジで…、待って、イクからもう口…ッひぁ、」
なんとか彼の口を離そうとするも、彼はそのまま先を咥えながら手を動かし、先っぽの刺激だけでももう我慢できないというのに手まで動かされたら限界を迎えないはずがない。やばい、このままだと本当に彼の口の中に出してしまう。
「いッ、く、…あ、!」
何て思ったのも既に遅い。俺は彼の口の中で射精してしまい、ビクンビクンという動きに合わせて飛び出すそれを浅葱は口の中で受け止めた。
ハァハァと息を整えながら射精後の倦怠感にぼんやりとするも、浅葱がごくりと飲み込んだ様子を見て俺は「おま…、ばか、なにのんで、」と彼を見ながら眉を寄せる。当然のように彼は苦い顔をしながら「やっぱり本当に精液って苦いんですね。」なんて言うものだから俺は呆れたような目で見るしかなかった。
「美津さん、結構溜めてたんですね。濃かったです。」
「…テストに追われてたらそうなるだろ。」
「はい。…嬉しいなぁ。」
最後の言葉は独り言だろうか、やけに嬉しそうな顔をする浅葱に俺は悔しい思いを抱えながら逆に彼を押し倒す。浅葱もそれを受け入れているのかそのまま倒れては俺を見上げてきた。
「本当はフェラし返そうと思ったけど無理。もう我慢できない。」
「え、み…美津さん?」
「ローション貸して。」
ベッドの脇のテーブルに置かれていたローションに手を伸ばし、それからついでに自分のカバンの中にあるコンドームも取り出すなり彼の胸元に置く。美津さん普段持ち歩いているんですか?という彼の質問を無視してローションの蓋を開けながらそれを手に出して彼の顔近くに手をついて四つん這いになった。それからクチュクチュと音を鳴らしながらそれを自分の中に塗り込む。当然のように浅葱は俺の様子を見つめながら驚いた顔を浮かべて固まっていた。
「…ッふ…、ぁ、ぁ…」
肛門から指の第二関節ほどの場所にある前立腺を擦ったり押したりして自ら快感を与える。以前、七瀬さんの前でもやったが、こうも余裕がない状態で自分を攻め立てるのは初めてで気付いたらまた勃起してきた。
「お前も、早く服脱げよ…挿れてくれないの?」
ずっと俺の様子を見ていた浅葱にそう声をかけると彼は自分のズボンを脱ぎながら「急にどうしたんですか…?」と不安そうな顔で見てくる。そう言いながらご立派に勃起させているじゃないか、なんて思った俺は体を支えていた腕を曲げ、彼にキスをした。舌を絡ませながらも快感で息苦しくなって俺は彼から口を離してはそのまま彼の首筋に頭を埋める。やばい、慣らすためにしているだけなのにイキそうになってどうするんだ。
少しだけまた果ててしまいそうになったが、なんとか堪えた俺は自分の中から指を引き抜いてそれからコンドームの袋を破っては彼の勃起した陰茎に丁寧につけた。
…やばい、この硬さで突かれたら意識ぶっ飛びそう。
「…挿れていい?」
「は…はい…」
さっきまでの余裕はどこへ行ったのか、途端に恥ずかしそうにする彼を見て胸がキュンとしてしまったが俺は浅葱の陰茎を掴むなりそのまま肛門にあててゆっくりと腰を落とした。中を押し広げながら奥へ奥へと進んでいく熱いソレに涙を少し滲ませながら俺は声を堪える。やばい、もう少し慣らすべきだったかな。
「あ……、ふ…、」
「美津さん…ッ…キツい、」
「ごめ…、余裕、なくて…」
挿入して暫く息が整うまでぼんやりとしていたら浅葱は俺の手をそっと握ってきては指を絡ませてきた。
「…大好きです、美津さん。」
その言葉を聞いて俺は歯痒くなってしまったのを誤魔化すように下唇を噛みしめてから「分ってる。」と強がって言ってしまったが本当は嬉しくて飛び上がりそうだ。本当は不安がなかった訳ではない。行為の途中で彼がやっぱり無理ですと言い出したらどうしようとずっと考えていた。
彼からその言葉を聞くまで不安で仕方なかったけど、今は安堵でいっぱいだ。
「…浅葱、ごめん。雰囲気ぶち壊すようなこと言っていい?」
「へ…?はい、何ですか。」
「…俺、自分がとてつもなく騎乗位下手なのを思い出した。」
俺のその言葉を聞いた浅葱は少し固まったが、俺の言葉を理解した途端に「あはは、急にそんなこと言うんですね。」なんて笑いだす。なんだよ、悪かったな。思えば七瀬さんにも下手って言われたし、彼と初めてセックスするというのに気持ち良くなかったら最悪すぎる。
すると浅葱は身体を起こしながら俺の背中に腕を伸ばしてそのまま押し倒す。結局はまた押し戻された訳だが、自分が変に動いて彼に二度とセックスしたくないと思われるよりはずっとマシだと思った。
「でも、僕も下手だと思いますよ。本当に久々なので。」
「お前の下手という言葉は信用しないからな。」
「まだ根に持ってますか。可愛いなぁ、美津さんは。」
笑いながら動きますね、と言ってきた彼の言葉に頷き、それから浅葱は腰を動かし始める。うわ、ほらやっぱり上手いじゃん。殴りたい。
腰の下にクッションを置かれ、一層動かしやすくなった彼は少し腰の速度を上げてきた。浅葱の亀頭が直腸を隔てた前立腺に当たるたびに俺は気持ちよさに声を漏らす。自分で自分の中を動かす時よりもずっと気持ちがいいそれに喘いでいると浅葱は「気持ち、よさそうですね」と言ってきた。
「あさぎ、あッ、気持ちい…ッん、あ、ふあ、」
満足そうな、幸せそうに微笑む彼の腕にしがみついて喘ぎ、勃起をしている俺の陰茎からはまた先走りが溢れては零れている。どちらかと言えば俺ばかりが気持ちよくなっている気がするが、それでも浅葱本人が満足しているなら今はそれでいいや。
それから彼は少しずつ腰の速度を緩めてから「美津さんってどういう体位が一番好きなんです?」と聞いてきて、お前の好きなようにして構わないなんて思いながらも「バックが好き。」と答えた。
後ろから突かれる度に俺は枕に頭を埋める。「ひっ、ぃ…あ、ッあ、」と色気なんてない嬌声を漏らしながらパチュパチュと鳴っているソコ。浅葱に一応、好きにしていいと言ったがまさかこうも人の弱点を攻め立てるのが上手いだなんて知らなかった。いや、最初のフェラで気付くべきだろ。しかし一度言ってしまったことを取り消すのもなんだか情けなくて、結局は今にも意識がぶっ飛びそうな快感を全身で受け止めていた。
「あぁ、あ、あ、待って、そこ…、ちょっ…!押し付け、んなバカぁ…」
情けない声を出しながらも彼が何度もわざと人の前立腺を突いたりグリグリと押し付けたりしていることに文句を言うも、浅葱は「すみません、でも…もっと余裕のない美津さん見たくて…」と言うものだからもう何も言えなくなった。なんだよ、余裕のない情けない俺を見て興奮するのか。
「美津さん、本当にバック好きなんですね。足、震えてますよ。」
「うるさ…ッ、あ、あぁ、待ってってば、…ッ」
喘ぎ声というよりはもう泣きそうになってきた俺を浅葱はそっと後ろから抱きしめて、「またイキそうですか…?」と耳元で囁く。本当は暴言の一つでも吐いてやろうかと思ったが、本当にそろそろ余裕が無くなってきた俺はその言葉に頷いた。
「僕もそろそろ限界なんです。一緒にイキましょう?」
「ふあ、ちょ、手ッ、」
ギュッと陰茎を握られ、そのまま扱かれながら腰を動かす彼に俺は抵抗しようとするも、前後で与えられる快感に抵抗する余裕がなく、そのまままた喘ぎながら彼の名前を呼んだ。浅葱も美津さん、と呼び返しては「本当に好き。」と言ってくる。分ってる。もう今日だけで何回も聞いた。
けど、何回聞いても心地がいい。
「はぁ、あ、いく、も無理、浅葱…ッふあ、あぁ…あっ、あ、ん、ん、」
そのまま彼の手の中で限界を迎えた俺は精液をシーツの上に吐き出し、ピュッピュッと出てくるそれがちょうど終わった頃に浅葱もまた果てた。暫くして彼は陰茎を抜き、もう体に力の入らなくなった俺はそのままベッドに倒れる。彼はコンドームを外してからそのまま使用したティッシュと共にゴミ箱に捨て、それから洗濯したばかりのタオルで俺の身体を丁寧に拭いた。いや、普通は隣で寝てくれるものじゃないの。それともまだ動く余裕があるのか。
「美津さん、寝てもいいですけど先に身体拭かないと風邪…いたッ」
なんだか終始余裕ありまくりの彼にイラッときて、俺は身体を起こしてから彼の頬をつねった。当然、彼は何が何だか分からないようで「え…怒ってます…?」と聞いてくる。それにもまたイライラさせられたが、俺はそのまま彼の胸に抱き着いて身体を預けた。受け止めながら「美津さん…?」ともう一度名前を呼ばれた。
「今は抱きしめさせろ、この嘘つき。」
嘘つき?と浅葱が聞き直してきたが俺は答えようとはせず、彼が離れないようにその体にしがみつく。暫くして浅葱は理解したのかそのまま俺の背中に腕を回して抱きしめてきた。
「美津さん。」
もう本当は何も答えるつもりはないが、呼ばれた名前に「…なに。」とだけ返事を返す。
「このあと一緒にお風呂、入りませんか。」
俺はその言葉にコクリと頷いて、それから自分の気が済むまで彼を離さなかった。
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