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第5話
10月。少しずつ秋風が吹き始め、星空が暗くなり始めた。
庭の手入れをしている時雨を横目に、凪沙は彼の書いた本を読んでいた。
とつぜんどさりと音がして、時雨が土の上に倒れこんだ。
「時雨さん?」
身体を揺すっても反応がない。お手伝いさんも今日はいない。
慌ててスマホを取り出し、凪沙は救急車を呼んだ。持つ手が震え、声は聞き取れるか不安なほどに焦燥してしまう。
時雨の普段から白い肌は、病的なまでに青くなっていて。
「君、彼とはどういう関係?」
救急救命士の1人が時雨を担架に乗せながら凪沙に問いかけた。
とつぜんの質問に、なんと答えればいいのかわからず、
「えっと…
知り合い、です。」
凪沙はそう答えた。
「親戚の人と連絡取れる?」
「…いえ。」
知り合い、と言う言葉で表すには彼の存在は凪沙には大きすぎて、なのにその言葉でしか表すことができなかった。
現に凪沙は時雨の家のことなど何もしらない。
「とりあえず同行してくれるかな?」
「あ、はい…。」
何もできない自分が悔しくて、そして不安で、心が潰れそうだった。
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