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第2話 二ヶ月遅れの高校デビュー

「おい、あの子誰だ!?」 「あんな可愛い子、今年の一年にいたか!?」 「ちょ待て、男子の制服着てるんだけど」 「え……じゃあ、あいつまさか……男!?」  次の日前髪を切って登校したら、学校が大変な騒ぎになった。今日も朝から雨で、傘をさしていたから登校中はそんなことなかったんだけど、教室に向かう途中からザワザワと……。  同じクラスの人たちは勿論、他のクラスの人や先輩や先生まで騒ぎを聞きつけてうちの教室を覗きに来ている。  オレ、噂の美少女転校生じゃないんだけど!? 「あっはっは!テンプレのような会話がどこかしこから聞こえてくるねぇ」 「笑いごとじゃないよすず!やっぱり前髪切らなきゃよかった……」  すると、クラス委員長の鈴木君がおずおずと話しかけてきた。 「斉賀さん、3年生が呼んでるよ」 「鈴木君、昨日までオレのこと斉賀君って呼んでたよね?」  なんでいきなりさん付けになるんだ。前髪切っても性別は変わらないよ!  突然鈴木君をドンッと体当たりで押しのけて、三年生らしい人達が三人、オレの前に並んだ。え、誰?この人たち。 「へえ、マジで可愛いじゃん!今年の1年女子はハズレだらけだと思ってたけど、男にこんな可愛い奴がいるなんて盲点だったな~」 「睫毛長ぇ~っ、名前なんてーの!?」 「斉賀希です……けど」 「名前まで可愛い!マジでチンコ付いてる?ホントは女子だったりして~」 「なっ」  勇気を出して反論しようとしたけど、いつの間にか来ていた先生が止めに入ってくれた。 「こら!お前ら三年だろう、さっさと自分の教室に戻れ!」 「チッ……じゃあまた昼休みに来るから待ってろよ、のぞみチャン」 「逃げんなよ~」  え、やだこわい。同級生にはイジメられそうにないけど、まさか先輩から目を付けられるなんて……!しかも絶対不良だよあの人たち、悪趣味なシャツ着てたもん。 「のんちゃん、ぼくも一緒にいるし、なんなら昼休みは職員室に避難しよう?」 「う、うん」  しかしすずはそう言ったあと、すぐにショボンとした顔で謝ってきた。 「ごめん、ぼくのせいだよね。あんな怖そうな人たちに目を付けられるなんて……」 「そんな、すずのせいじゃないよ!」  だって、前髪を切るって決めたのはオレだもん。  ていうかそもそも、オレがこんな顔なのが悪いんだし。 「山田君、授業を始めるから自分の席に座りなさい。じゃあ斉賀さん、教科書の35ページから読んで」 「先生、昨日までオレのこと斉賀君って呼んでましたよね??」  オレ、なんでこんな顔に生まれたんだろう……両親が悲しむから口には出さないけど。  本当は雨なんかより、自分の顔が一番嫌いなんだ。  素顔を晒して堂々と振舞うなんて、やっぱりオレには無理だったんだ……。

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