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第3話 普通にピンチなんですが

 午前の授業がすべて終わったあと、オレとすずは急いで職員室に向かう準備をした。先生に事情を話して、職員室の隅っこででもお昼を食べさせて貰おうと思ったのだ。  しかし。 「おっと、おべんと持ってどこ行くの?のぞみチャ~ン」 「な、やっぱりここで張ってて良かっただろ?」  オレたちの行動は不良先輩たちにはお見通しだったようで、職員室へ向かう途中であっさりと捕獲された。  周りの生徒は皆一年ということもあり、遠巻きに見ていて誰も助けてくれない。オレはすずだけでも逃がしてもらおうと思ったけど…… 「あれ、のぞみチャンのダチもよく見ると可愛いな?」 「マジだ。今年の一年、男子ばっかり豊作だな!」 「まあまあ、俺ら可愛けりゃどっちでもいいし」  すずも一石二鳥とばかりに捕獲された。 前後と右側を不良に囲まれて(左側は壁だ)簡単には逃げられそうにない。いったいどこに連れて行かれるんだろう……。 「あの、一緒にお昼食べるだけですよね……?」 すずが不良の一人に尋ねた。 「ああ?メシなんかお楽しみの後だよ」 「お楽しみって?」 「エロいことに決まってんだろ」 オレとすずはサーッと蒼くなった。 ちょっとマジでオレ達ピンチじゃん!逃げないと!!……と思ったところで、奴らの目的地――体育館倉庫に着いてしまった。 「入れよ」 「ぅわっ!」 オレとすずは乱暴に中に押し込まれ、既に敷かれていたマットの上に並んで転ばされ た。うう、湿気で黴臭いよぉ。 「へえ、ホントに可愛いじゃん、よく連れて来れたな」 「だろ~?」 「!?」  そこで、中にも数人仲間がいることに気付いた。 「嘘、何人いるの……!?」  すずが今にも泣きそうな声を出して、オレの腕にギュッとしがみついた。不良達はニヤニヤと下卑た笑みを浮かべながら、ぞろぞろとオレ達の周りに集まってくる。 オレはすずを守らなきゃと思い、ここに連れてきた一人を睨みつけた。 「こっ、こんなことしてタダで済むと思ってるんですか!?け、け、警察に突き出しますよ!」 「おおコワッ。でも、いつまでそんな強気なことが言えるかな?おい、脱がせろ!」 「えっ?ちょっと何す……うわあぁムグッ!!」 「のんちゃん!!」 沢山の手が前後左右から伸びてきて、すずと引き離されたと思ったら手で口を塞がれた。  そしてまだ真新しい制服のシャツを引きちぎるように乱暴に引っ張られて、オレはあっという間に上半身を裸に剥かれていく。  よく見ればスマホも向けられてる。撮って脅す気なんだ……! 「へえ、こいつマジで男だ。つーか色白っ!」 「乳首の色、ピンクだぜ!エロかわ~!ハアハア」 「これなら男でも余裕で抱けるなぁ」 「むーっ!!むぐぐぐ……!!」 本当に、前髪なんて切らなきゃ良かった。 雨でうっとおしいのなんて、我慢すれば良かった。 すずまで巻き込んで……ごめん、すず。 もはや処女喪失どころか死を覚悟した、その時だ。 《ドカァッ!!》 「噂の美少女はここかァ~~!?!?」 物凄い音がしたと思ったら――誰かが横開きの鉄製のドアを縦に蹴り破り、行動に見合わないウキウキとした口調で体育倉庫に突入してきた。

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