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第23話 想像できれば存在する

日曜日。 オレは十時近くなってもベッドの中でグズグズ。 試験前の一週間は親との約束でバイトを入れないことになっていたから昨日の土曜は休みだったし、もともと日曜日にシフトは入っていない。 そりゃ夜更かしもするし、ゴロゴロもするぜっと。 母ちゃんが顔を出す。 「(まこと)~あんた、いつまで寝てんの」 「ん~」 「もうすぐ期末テストでしょ。勉強してんの?」 「ん~」 「もう~ハッキリしないわね~」 「腹へった~」 「あたしもうパート行くから、自分でなんでも好きなもの作りなさい」 「え~」 「お父さんも休日出勤でいないから。静かで勉強するにはもってこいでしょ」 「んあ~」 「お昼よ。もういい加減、起きなさいよ」 「んあ~」 「もう~」 そのまま、もう一眠り。 次に目を覚ましたのはお昼過ぎ。 さすがに寝過ぎた。 ――静かだ。 しばらくゴロゴロしていたが居間に下りてテレビをつける。 腹へった。 お湯を沸かしてカップ麺をすする。 テレビではうまそうなパスタの特集が始まった。 パスタ。 パスタか。 灰谷が作るパスタ食いたいな。 トマトとナスとベーコンの。 ニンニクが効いてて上に大葉の千切りがのってるやつ。 あれ、うまいんだ。 隠し味にウスターソースとかって、あいつどこで覚えたんだろう。 ……今頃二人で食べてるのかもしれないな。 いや、それとも明日美ちゃんが作ってるのか。 彼女の手作り料理。 日曜でも灰谷んちの母ちゃんはどうせ仕事でいないだろうから、なんでもやり放題だよな。 やり放題って……。 ……ヤってんのかな。 ってそれだよな。 真っ昼間から……。 いやいや……。 ヤらし~。 ズルズル~。 麺をすする。 女か。 女いいんだろうな。 だってそういう風にカラダができてんだもんな。 考えてもしょうがないことだった。 灰谷が明日美ちゃんとそうなったって知ってからその手の妄想が頭を離れない。 勉強……。一応するか。 半分くらい食べ残したカップ麺を流しにあけて、容器をゴミ箱に突っこんだ。 部屋に戻って机の前に座り、教科書を広げる。 広げてはみるが……。 あ~あ~。 勉強なんか手につかない。 腹いっぱいだし。 オレは机に突っぷした。 窓の外は明るい。 夏の日差し。 外、暑そうだな。 はあ~。 『真島。真島』 朝、起こしてくれた灰谷の声。 目を開けたら飛びこんできた灰谷の顔。 あの声で、いつも目を覚ましてえ。 しょうがねえなコイツって顔。 許されてる顔……見たい。 この間ベッドで間近に見た眠る灰谷の顔。 目。 鼻。 口。 ヨダレ。 無防備に眠る姿。 汗のニオイ。体温。 ――オレを見つめる目が欲を孕む。 大きな手の長い指がオレの頬にふれる。 顔を包みこんで、愛しくてたまらないというように柔らかく口づける。 舌を入れて、中をかき回す。 想像するだけでゾクゾクした。 首筋にキス。 小さく落とされるキス。 灰谷の手がオレの胸を撫でる。腹を撫でる。腰を撫でる。 キュッと下半身に血が集まる。 オレはたまらず自分の股間に手を伸ばす。 灰谷。灰谷。 灰谷の手がオレ自身をそっと包みこむ。 「はぁっ……灰谷……灰谷……ん……ふぁあっ」 気がつけばオレは声を出していた。 で、後ろ。 後ろがヒクヒクする。 こんなの初めてだった。 オレは指で後ろの穴を撫でる。 あ~こっち、こっちに……欲しい……。 後ろ……でも、こっち覚えちゃうと、もう……多分……ヤバイ。 指……ダメだ……。 ローションとかないと……キツイ。 オレはベッドに潜りこむ。 妄想が止まらない。 両手首を掴んで後ろから押さえこまれる。 覆いかぶさるカラダの重み。 皮膚の熱。 熱くて大きくなったモノを埋めこまれる。 中をミリミリと分け入っていく。 オレの中がうねる。 抜き挿しされる感覚。 グチュグチュと音がいやらしく響く。 オレの上で腰をふる灰谷からもれる息。 『ハッ……ハッ……ハッ』 オレは自分の前をこすりあげる。 「ああ……んっ……んっ……んっ……ああっ」 イッた。 今までで一人でした中で一番良かった。 って、あ~シーツに……。 途中から気がついていた。 カラダに呼び起こされた感覚はあの日、あの男、あのおっさんに抱かれた時のものだった。 一人で前だけこすってた時とはぜんぜん違う。 オレ……灰谷に突っこまれた……い……いやいや。 そこは考えるなオレ。 今まで灰谷をオカズに何度もヌイてきた。 友達ヅラしながら。 女じゃ中々イケなかったから。 灰谷だとイケるんだ。 カラダは正直だった。 灰谷を見てると灰谷を思うと勃った。 ただの誤作動、生理現象、オカズの一つ……と思いこもうとした事もあったけど。 佐藤や中田、他の男じゃ勃たねえし。 試したオレはチャレンジャー。 本当にオレってやつは……。 それから……家に一人なのをいいことに何回ヌイただろう。 まさに猿。モンキー。動物。 十代男子の精力をなめんな。 ローション、アマゾンで注文しちゃったりして……。 不毛だ。不毛すぎて死にたくなった。 一つ、わかったことがある。 知らなければ、それは存在しない。 オレはそう思っていた。 でもそれは間違いだ。 想像さえ出来れば、それは確かに存在するのだ。 頭の中にイメージとして。現実のようにまざまざと。 そして……苦しくなる。 案の定というか当然、期末の結果は散々だった。

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