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第31話 悪夢
「真島、真島起きろって」
ん~。灰谷の声がする。
目を開けると……まぶしい……。
オレを見下ろしているのは……灰谷……?
光がまぶしくて顔が見えない。
でも……声は灰谷だ。
「起きろって。遅刻するぞ」
「ん~」
灰谷がオレの手を引く。
「ほら、みんな待ってるから」
「みんな?」
灰谷に手を取られて階段を上る。
ん?階段?下りるんじゃなくて上がるの?
1段 2段 3段……13段。
ん?オレなんで数えてんの?
ここは階段の上。
ちょっと高いところみたい。
ざわざわ ざわざわ。
辺りに大勢の人がいる気配はしているけど。
薄暗くて姿は見えない。
ん?
手を引いていた灰谷はいつの間にかどこかに消えている。
ここは?
え?
顔を上げればちょっとやそっとじゃ切れそうにない太いロープが輪になってぶら下がっている。
ギシッ。
床がきしむ。
見れば、足元の床は扉になっていて、下に向かって開くようになっている。
え?これって……。
柔らかい布で目隠しをされる。
え?え?
手首を後ろで縛られる。
え?ちょっと待って。
そして、首に太いものがかけられ、キュッと締められた。
シャンシャンシャンシャン。
シンバルをハチャメチャに叩いたような音が響き渡り、ざわめきが消え、ぴーんと張り詰めた空気が満ちた。
そして……。
足元の扉が開いてロープに首を吊るされる?
そんなイメージが頭の中に沸き起こる。
オレはカラダを固くして次に起こることに備えようとする。
……。
何も……起こらない。
え?何これ?え?
心臓がバクバクと音をたてる。
何?なんだこれ。
オレは耳を研ぎ澄ませて、辺りの気配を感じようとする。
何も聞こえない。
聞こえるのは心拍数の上がった自分の心臓の音だけ。
まるでオレの周りだけストップモーションがかかったみたいだ。
それともオレの時間感覚がおかしいのか?
もしかしてこれはコンマ何秒でオレが感じていることなのか?
いろんな考えが一瞬にして駆け巡る。
でも……何も起こらない。
時間が過ぎる。
縛られた手首のわずかな痺れと首を締めつけるロープの感触と重さ。
そして頼りない足元。
その時、耳元を風が吹き抜けた。
ヒューヒューと音がする。
冷や汗が背中を流れる。
それでも、何も起こらない。
宙ぶらりんな状態に恐怖がこみ上げる。
わー。わー。わー。
叫びが止まらない。
でもオレの声はまるで何かに吸い取られてしまったように外に出ない。
助けて。助けて。助けて。
声にならない心の叫びが止まらない。
わー。わー。わー。
「うわあ~」
オレは大声を上げてガバリと飛び起きた。
心臓がこれ以上ないくらい早く動いている。
ベッドの上だった。
夢?
夢かあれ。
オレは首筋を撫でた。
首に掛けられたロープの生々しい感触が残っていた。
そして、乾いた喉の痛み。
耳元をヒューヒュー吹き抜ける風の音も耳の奥に残っていた。
リアルだった。
まるで現実みたいに……いや、現実以上にリアルだった。
これは……あれだな。
城島さんが言っていた夢の光景だ。
マジか。
「こえ~」
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