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第51話 帰り道のケンカ①
佐藤の家からの帰り道。
中田と別れて、オレを乗せるでもなく、先に帰るでもなく、自転車を押し、黙って歩く灰谷。
その灰谷の背中にオレは言った。
「なんであんな話すんだよ」
「何がだよ」
「セフレとか」
「いいだろ、セフレの話ぐらい。なんか問題あっか?」
「……ねえけど。佐藤に悪いだろ」
「佐藤なんか気にしてねえくせに」
聞こえるか聞こえないかの声で灰谷は言った。
「何がだよ」
「なんでもねえよ」
つうかなんでこっち見ねえのこいつ。
「何、絡んでんだよ?」
「絡んでねえよ」
「おい灰谷」
前を向いたまま。
「灰谷って」
オレの方を見ない。
「灰谷!」
灰谷が止まった。
「言いたいことあるなら言えよ」
「……」
「聞きたいことあるなら聞けよ」
「……」
灰谷はこっちを向かない。
「……ねえよ」
「絡むぐらいならオレに聞けよ、なんでも答えてやっから」
「聞きたくねえよ」
「は?」
「聞きたくねえつってんの」
「つうか聞けよ」
「それ以上なんか言ったらただじゃおかねえぞ」
「ただじゃおかねえってなんだよ。オマエなあ……」
その時、灰谷が振り向いた。
その――顔。
こいつ……もしかしてわかってる?
城島さんが親戚じゃなくて、オレの言うセフレだって?
そうなのか?そうなのか灰谷。
にしたってオマエ……。
「オマエ、こないだと言ってること違うじゃん」
「……」
「オレがなんでも構わないんじゃなかったのかよ。一番の親友だってのは死ぬまで変わらないんじゃなかったのかよ」
「変わんねえよ。変わんねえけど……」
「変わんねえけどなんだよ」
「……なんでもかんでも話せばいいってもんじゃないだろ。オレも、聞かねえし」
受け入れられないってことか。
受け入れられないから聞きたくないってことか。
「……だな。オレもオマエも、もうガキじゃないんだし。いつまでもおんなじ方ばっかり見てもいられないわな」
「……ああ」
「よくわかったわ」
オレは回れ右して、灰谷から遠ざかった。
まあそうだよな。
気持ち悪いよな。
親友が男とヤってるかもなんて。
聞きたくないよな。
オレの口から聞かなければ、知らなければ、それはなかった事なんだろ、オマエの中で。
でも、割り切れなくて絡んできたんだ。
オレ、いくらでもウソついたのに。
じゃなきゃ気持ちワリぃって言ってくれりゃあよかったのに。
あんなこと……言ってくれなきゃ良かったのに。
そうしてくれたら、こんな、最悪な気分にならなかったろうに。
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