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第93話 ココロの乱れ 部屋の乱れ
はあ~。
久々の灰谷との二人きりになんだか異常に疲れた。
部屋に入るなり買った荷物をドサドサと床に落とし、ベッドに寝転がり、天井を眺めた。
『やっぱオマエといんのが、一番ラクで面白くて楽しいわ』
灰谷の言葉が頭の中で回っていた。
灰谷にとっては特に意味のないであろう言葉で、オレはすぐに戻ってしまう。
『どうした。そんな人殺しみたいな顔して』
人殺し。人殺しか。
そうかも人殺しなのかも……。
自分の気持ちばっかで、周りをどんどん悪い渦に巻きこんでいく。
どこにも行き着かないこの想いをどこかに葬りたい。
こんな時、城島さんを思い出してしまう。
城島さんは今頃どうしているだろう。
あの部屋にまだいるのかな。
公園で会ったあの人は迎えに来てくれたのか。
本当の名前で呼ばれるようになったのかな。
それともまだ一人、あの部屋にいるのだろうか。
城島さんの空っぽの部屋。
はじめはなんだか落ち着かなくて怖くて仕方なかったけど、今は何もないあの部屋を思い出すと胸がシンとして心が落ち着く気持ちがするのはなぜだろう。
必要最低限しかない部屋。
自分の本当に一番大事なものがわかる部屋。
誰に煩わされることもなく思うがまま、ただ好きな人を想い続けられる場所。
オレにもそういう場所が持てるようになるだろうか。
「はあ~」
ため息ついて寝返りを打った。
すると、今まで気にもならなかったのに、あらためて自分の部屋の惨状が目についた。
――オレの部屋、キッタネーな。
脱ぎ散らかした服。
下に持っていくのがめんどくさくて、そのままのペットボトル。
読み終わった雑誌や本棚に入りきれずにはみ出した本が床を占拠している。
結衣ちゃんとのデートで買ったペアのぬいぐるみやら何やら趣味じゃないグッズの数々。
テレビの前に積み重なったCD・DVD・ゲームソフト。
机の上にもプリントやらなんやら。
モノがあふれかえっていた。
掃除、最後にしたのって、いつだったっけ?
母ちゃんがしつこく掃除しろって言うはずだわ。
つうかこの部屋……。
まるでオレの心の中みたいじゃね?
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