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さよならMr.RIOT
ユウトは部屋に入ってきた男を知らなかった。だけど男はユウトを知っていた。
どう見てもヤンキーや半グレの類ではない。そしてその声色から日頃の報復でもなさそうだった。だから余計に身震いをしてしまう。
「テメェ…誰だよ…! なんでこんな格好させてんだよ! ああ゛!?」
恐怖と警戒を悟られないように攻撃的に叫んで威嚇する。しかしそれは男に通用しない、通用しないどころか、ゾクゾクと興奮してるようにも見受けられる。
「あぁ…あぁ……あぁっ! いい! 君の怒鳴り声も全て愛らしい……こんな簡単に荒城学園のMr.RIOTが手に入るなんて…あああ…夢のようだ」
コツ、コツ、コツと近づいてくる。
「なんで、俺を知ってんだ…誰の差し金だ!」
近づくものは危険すぎる、そう脳が危険信号を発信する。ユウトは思い切り叫んで問う。
男は眼鏡のブリッジを指であげてポジションを直して、ニコリのつもりでニヤリと口角を上げる。
「誰の差し金でもないよ。僕がユウトくんを好きだからこうしているんだ」
「はぁ⁉︎ つーかお前誰だ! 俺はお前の顔は知らねぇぞ!」
知らない人物だからこそ、危険だ危険だ危険だ、ユウトの全身の細胞が警鐘を鳴らしている。
「そうだよね、僕のことなんか君は知らなくて当然だ。だけどね、僕は君を知っている……そしてずっと恋い慕っていた……こうして君を捕まえて2人きりになることを毎夜夢で見るくらいに、ね」
男の熱烈な愛の告白、ユウトには怪文書の綴 りに聞こえる。
「男が男に恋だ? はっ! とんだ変態ホモだな!」
「ああ…そうやって僕に浴びせらる罵倒も堪らないよ…ああ…!」
口撃 は効かない、あとは拳しかないのに手足の自由をしっかり奪われているユウトには為すすべがない。
男はしゃがんで、壁にもたれて強制的にM字開脚の体制になってるユウトに目線を合わせると白衣のポケットから小さな注射器を取り出した。
「はぁ……これで、ユウトくんは僕のモノに……ああぁぁぁぁぁ! 堪らない!」
男は興奮し高笑いをする。
ユウトはとうとう怯 んで顔が蒼くなった。
「なに、を……」
「さぁ…ユウトくん……Mr.RIOTとのお別れだ」
プスッ
男は注射器をユウトのこめかみに刺し、グググと薬液を投薬した。
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