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地の塩(ロボ) 第3話
紅の様子が、だんだんとおかしくなっていく。
気怠そうにして、微熱が続き、甘い香りを振りまいて、ほろほろと涙を流す。
「まるで番にはぐれたよう」
家の者たちはそう言って同情を寄せる。
しかしその体はまだ子どものままだし、なぜ発熱しているのかもわからない。
俺がいないときにはよく眠れていないようだと、家の者が抱き枕を作ってやっていた。
夢見が悪いらしく、朝様子を見に行くと、ベッドの上でぼんやりと座り込んでいることが増えた。
夜番の者が、夜中にふらふらと歩きまわっているのを見たと、報告してきている。
「旦那さま、紅さまが!」
家の者が慌てているので話を聞けば、紅は一晩中庭にいたようだという。
ただでさえ弱っているところに、そんなことをしたせいで、ついに熱を出して寝込んでしまった。
仕事の合間に、獣型をとって様子を見に行く。
熱で潤んだ瞳をこちらへ向けて、不思議そうな顔をする紅に、むかっ腹が立った。
爪を中に入れて、肉球が当たるように、ぺちんと額を叩く。
「お前のようなへなちょこが、薄着で夜中に外に出て、朝までそのままとか……熱が出て当たり前だ、バカたれ」
つらつらと紅の唇からこぼれる言葉は、今の心の中をあらわしたままに、混乱したもの。
今の自分のことを教えてほしいという。
片割れの行方を問う。
番は何か、選ばれるのとはどういうことか、館で教えられたことと自分の目で見た差異に、戸惑いを訴える。
哀れな紅。
「俺のものになればいい」
「それはダメ」
「何故?」
「紅はまだ子どもだし……それに、違うと思うの。ロボは紅のじゃない」
惑い涙を流す癖に、頑ななまでに俺の誘いには首を横に振る。
俺は獣型のまま寝台に上がり、紅の手が届くところに尾を置いた。
「寝なさい」
「ロボ」
「覚えておけ。お前は、自由だ」
「ロボ?」
「俺はお前を気に入っているが、お前はお前の好きな相手を選んでいいんだ」
俺の尾につかまって、涙を流しながら、紅は眠りにつく。
気持ちが悪いほど、聞き分けがいい。
拾った時から気になっていたことだが、紅は聞き分けが良すぎる。
唯一のわがままが、俺の尾に対する執着。
しかしそれも、尾は弱点で番にくらいしか触らせないと教えたら、回数をぐんと減らした。
そうだ。
お前は好ましい香りを発しているけれど、俺の番ではない。
お前でなければ、俺の番はどこにいるのだろうな。
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