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第十五話 約束して(R-18)

「ん、ッく……は、あ」 「痛い?」 「少しだけ」    ルーカスは俺の手を握り、ゆっくりと自身を俺の奥に沈めていく。とうに服は何処かに追いやられ、素肌と素肌が密着していた。初めてだったこの間の夜と同様に愛撫され、もどかしい程に解された俺のナカはルーカスのを容易く受け入れ、自分でもわかるくらいきゅうきゅうと締め付けている。それでも全部入れるには狭く、軽い痛みを伴う。今までどれだけ荒々しく抱かれようが届かなかったところまでルーカスのが入ってくるからだ。 「入っ、た? 全部……」 「うん、入ってる。大丈夫? 苦しい?」  平気だ、と言ってルーカスの背中に手を伸ばした。額、鼻の頭、頬、瞼、そして唇。顔のあちこちに触れるだけの口付けが落とされる。薄くて生暖かい唇と顔にかかる髪が擽ったくて気持ち良い。俺は激しく腰を打ち付けられるのが好きだけど、多分ルーカスは挿入よりも口付けが好きだ。 「ルーカス、もっと……くち」  唇同士の口付けを強請るとねじ込まれた舌が優しくねっとりと犯すように口内を這い回る。満たされる心とは裏腹に、下腹部はどんどん切なくなっていく。 「アイリス、意地悪していい?」 「んっ、良いよ」  そう言いながら俺は足でルーカスの腰を引き寄せた。もう充分馴染んだ。そろそろ動いてほしい。"意地悪"の具体的な内容は聞かないまま許可を出した。ルーカスにされるなら何でも良い。きっと苦しいのだって痛いのだって気持ちよくなれる。 「オレ動かないから、アイリスが自分で動いてシて?」 「えっ、っと」  抱きしめられたままゴロンとルーカスごと身体をひっくり返され、俺はルーカスの上に乗る体勢になった。 「オレの、欲しい?」 「欲しい……」 「支えてあげるから、動いて」  ルーカスは小さな悪戯っ子のように無邪気な笑みを浮かべて笑った。 「あ、ッん……く、はあ、あ、イく」 「まだ、ダメ」 「っ、何で……」  腰を支えられながら上下に動かし、必死に一番気持ち良いところに擦り続けている。何度も達しそうになっているのに、達する直前にルーカスは俺に動くのを止めさせた。それが何度も続き、もうかなり限界が近い。ルーカスの手を振り払って動いてしまいたい。 「まだ頑張れる?」 「は……んう、う」  再び腰を上げ、一気に下ろす。はあはあと息を切らしながら夢中で打ち付け、また絶頂を迎える直前で止められた。 「ルー、カス……っ、イキたい、も……むり」 「教えて。アイリスの恋人は誰?」 「ルーカス、だろ、ッあ」 「じゃあ、アイリスを抱いても良いのは誰?」 「ルーカス」 「他には?」  他に? 他なんかいるわけない。ルーカスだけにしか抱かれたくない。ルーカス以外なんて真っ平ごめんだ。ああそうか、そういう事か。 「俺ッ、は、ルーカスだけの、んう、はぁ……して良い、のは、ルーカスだけ、だから」 「うん」 「ルーカスにしかあげないから、何があっても他の奴なんかにさせないから……」  お前が欲しい。途切れ途切れにそう言った。ルーカスの顔を見下ろすと、満足そうな笑顔だった。 「アイリス、もう少し頑張れる?」 「ん、だいじょうぶ」  そう言った瞬間、ルーカスに下から突き上げられた。 「あうっ、ッ……あ、まっ、て、あんッ、や、イく、あッ」  自分一人で動くよりずっと気持ち良い。今度は止められなかった。ずっと欲しかった感覚に盛大に達し、ルーカスの腹に白濁をぶちまけた。少ししてから腹の奥に吐き出されたのを感じる。一度ゆっくり引き抜いてから、ルーカスを抱きしめるようにして倒れ込んだ。 「お疲れ様、アイリス」 「ん……重くないか?」 「全然平気」  ちゅっと音を立てて額に口付けられる。ほぼ全体重をかけているにも関わらず、ルーカスはけろっとした顔で俺を見上げていた。そして最初に俺がしたように俺の背中に手を回す。 「このまま聞いてくれる?」 「ああ」 「オレ、アイリスが好きだよ。アイリスが大好きで大事で、大切にしたい。アイリスがオレの事を信じてくれているように、オレもアイリスを信じているよ。アイリスはオレに愛されているし、これからもずっと愛していくよ。だからアイリスはもっと自分を大事にして。何よりも大事にして。上手くいかなかった仕事も周りからの評判も気にしないで。いつでもオレと目を合わせて」 「うん……うん」  俺は泣きそうになりながら何度も何度も強く頷いた。ルーカスのそういうところが好きだ。真っ直ぐに本音を伝えてくれて、汚いものを全部融かして綺麗な言葉でと優しい腕で包んでくれる。俺が初めて得た心から安心できる場所。ルーカスの言葉は慈雨のように俺の心に染み込んだ。

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