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第10話
「で?お前、どうやって中に入った?」
鍵は閉めてったし、輝が開けるとは思えない。
「合鍵、作っちゃいました」
孝太は悪びれる様子もなく、『てへっ』とでも言うような顔で合鍵を見せる。
その瞬間、俺は孝太の顔面目掛けて拳を振り下ろした。
バシッと音がして、孝太はギリギリ俺の拳を防ぐ。
「神さんっ、危ないっすよ」
「俺、お前に合鍵なんて渡した覚え無いんだけどなぁ」
そう言って俺は孝太に受け止められた拳をそのまま押す。
孝太も両手を使って必死に止めてるけど、力は俺の方が強いから拳は少しづつ顔に近付いていった。
「神さん!落ち着いて!」
俺が拳を緩めると、孝太は涙目になって謝ってきた。
でもまぁ、こいつが合鍵持ってても支障はないからそのままでもいいかと思う。
「で?結局何しに来たんだよ」
「噂の同居人見に来ました!」
孝太は満面の笑みでそう答える。
「帰れ。うざい。」
「神さーん!そんな連れない事言わないで下さいよ~!」
孝太はそう叫びながら飛び付いて来た。
俺はそれを避けようと後ろに下がった。
「わっ!」
そう声がしたかと思ったら、ドタッと派手な音がした。
後ろを見ると、輝が尻餅をついてる。
俺が輝が後ろに居ることを忘れて下がったから突き飛ばしてしまったらしい。
「悪い、大丈夫か?」
そう言って手を差し伸べるけど、輝は小さく頷いて俺の手は取らず自力で立ち上がった。
俺の手を掴まなかったことは今に始まったことじゃないからそんなに気にしない。
そう思いつつも俺は行き場の無い手をプラプラと振った。
「そうだ、朝飯買ってきたんだ」
『食うか?』と聞くと輝は小さく頷く
俺は放り投げたコンビニ袋を拾うと、買ってきた物をテーブルの上に広げた。
『好きなもの取って良いぞ』と言うと、輝は食料と俺を交互に見る。
何にするか迷ってるのか、先に取ることを遠慮してるのか輝はなかなか手を伸ばさない。
俺はため息をつくと、適当に惣菜パンを手に取って椅子に座った。
そんな俺を見てか、輝もオズオズとパンに手を伸ばした。
輝が手に取ったのはクリームパン。
「甘いの好きなのか?」
そう聞くと輝は小さく頷く。
「ならこれも食べていい」
そう言って3種類あるスイーツを輝の前に置いた。
それにも輝は戸惑ってた。
「俺は甘いのなんて食べないからお前が食べろ。」
俺がそう言うと、横からニュウっと手が伸びてきた
「要らないなら俺が貰うッス!」
そう言って孝太が輝にあげたスイーツを取ろうとする。
俺は孝太がスイーツを取る前にその手をはたき落とした。
「神さん、痛いっす!」
そう言って孝太は俺が叩いた手を擦る
「誰がお前にやるか!てかお前まだ居たのか。もういいから帰れ。」
て言うか、こいつの存在すっかり忘れてたな。
「神さ~ん、そりゃ無いっすよ~!」
そう言って孝太は泣き真似をした。
とは言ったものの俺と輝じゃ買ってきたパンは食べきれなくて、結局孝太も一緒に食べることになった。
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