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第16話

もう何年たっただろうか? 今年もまた梅雨がやって来る… 「君は今どうしていますか?」 俺はあの日から先に進めないまま色の無い世界を歩いています。 「はなちゃん…今でもこんなにも恋しい」 なのに…怖くて迎えになんていけない…仕事であの男に出会してもお互い素知らぬ振り…何度もはなちゃんのこと聞こうとしたけれど聞けなくて今日もあげようとした声を殺した… いつものように男の背中を見送って目を伏せる。ねぇ…はなちゃん…どうしているの? 「暁。どうした?調子悪いか?」 上司だ。元カレの旦那であるあの… 「いえ…大丈夫です。」 「なぁ。暁。相談があるんだけど今日の夜は忙しいか?」 「いえ。大丈夫です。あいつは平気です?」 「…あぁ。今日は友人たちと遊びにいくらしくて帰宅しないんだ」 「そうですか」 それ以上は何も言わない 相談はやっぱりあいつのことで 「実は…浮気してるみたいなんだよ。何か知らないかい?」 「すいません。わかりません」 性欲の強いあいつのことだ俺が何度言っても折れなかったからそういうところにいって男を漁っているのだろう。きっとあの日から数年間ずっと… 「それでも俺はあいつが好きだから…別れたくない…」 「…そうですか…」 「時間を取らせて悪かったな…」 「いいえ」 どうしてこんなにもいい人なのにお前は裏切る? 「あなたも浮気してみます?」 「何を言ってるんだ?」 「俺も今寂しいんです。慰めてくださいよ」 「…暁…」 「…だめ?」 もうどうでもいい。あいつの家庭なんて壊してやる。お前はこの人のこと要らないんでしょ?だったら俺に頂戴? 「暁…正気か?俺は男だぞ」 「あなたになら抱かれてもいいかな」 「っ…」 「あいつとしたのはいつ?」 「…一月前…」 あいつがそれで満足するわけがない。毎日何度もやらないと気が済まない奴なのだから… 「俺が慰めます。あなたのこと大切だと思っているので」 「…暁っ…」 それから自宅に上司を招いた。先に風呂に入る。この間に上司が帰ってしまったら? それはそれで別にどうでもいい。 初めて受け入れる準備をする。後ろなんて使ったこともないけどあいつを抱いてきたんだ。やり方くらいわかってる。 「お待たせしました…」 上がったらまだそこに上司は存在していた。 タオル一枚巻いただけの俺の姿を見て息を飲んだのがわかった。 「暁…きれいだね…」 「ありがとうございます」 そしてそのままベッドへ雪崩れ込む。 正に事に及ぼうとしたその時だった 「だめっ!!」 制止の声がかかった。 あいつだ。俺の家に上司を連れてくる直前連絡しておいたのだ 『お前の旦那とやっていい?』って 『嫌なら止めにおいでよ。俺の家にいるから』って 「何で?…」 「やだっ!!ごめんなさい!ごめんなさい!!もう浮気しない!あなただけ見るから…だから…他の人を抱かないで?」 上司は唇を噛み締めて立ち上がる 「悪い…暁…やはり…俺は…」 「ふふっ…わかってます。お前ももうすんなよ」 「わかった…ごめん…」 2人の姿を見送ってベッドに伏せた 「俺のときはあんなに酷いことしたくせに…あんなに苦しそうに泣き縋るなんて…」 そのまま眠りに落ちた。空しさが募っただけだ…

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