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接近

生徒達がクラスに馴染んだ頃、ほんの少し皆が浮き足立つイベント、席替えが行われた。 「羽柴、隣だな」 「おう風早、よろしく」 右にはイケメン風早が。いつもの見知った顔でホッとする反面、女子じゃないことに若干のガッカリ感。 それにしたって風早の周囲には爽やかな風が吹いている。俺が女なら間違い無く風早に惚れただろう。 それに引き換え何なんだ。 俺の視界に嫌でも入る、左側のもっさりとした頭は。 巨体なまりもか。 あああ、見たくない見たくない。 絶対に認めたくない……。 左隣が、瀬名英治だなんて……! もう、なんていうか、左から流れてくる空気すら吸いたくないような。 でも。 誰にでも分け隔てなく接することで人気を確保しようとしている俺はガバッと左を向いて瀬名に声をかけた。 「よろしくな、瀬名!」 努めて明るく、笑顔で! ほら、オタクにも優しい俺っていい奴だろ? どうだ!俺の裏だらけの精一杯の好意を受け取れ、瀬名! 顔面に無理矢理作った笑顔を貼りつける。 ピリピリと頬の筋肉が痛い。 瀬名はゆっくり顔を上げて曇りがかったメガネでチラと俺を見ると、 「あー……」 と低く呟いた。 そして何とも無表情なその顔はそのまま正面へ戻って行く。 ~~~~っっ! むっかつくぜーっっ!! マジむっかっつっくっ!!! ああああ、一発ぶん殴ってその沸いた頭に活を入れてやりたい!!! ぐぐっと我慢して俺も顔を正面に戻す。それを見て風早が苦笑していた。 あぁ、先が思いやられるわ……。

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