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第11話
琴音ちゃんがいなくなったのを確認して、永谷がじと……と目を細めて俺を睨み付けた。
「うーわークズいな。お前最低」
「ん?何かな永谷くん」
白々しく笑顔で応える俺に永谷は真実を突き付ける。
最低だと。
正にその通りだと思うけど。
永谷はビシッと人差し指を立てて某推理もの漫画の探偵ようにポーズをとって言った。
「何かなって……俺は知っている!お前この間あゆみちゃんと……っ!」
「おまっ、声が大きいって!」
慌てて俺は永谷の口を手で塞いでやった。フガフガしているが、女にだらしないっていうのは好感度下がるだろう。皆に聞かれたら困る……!
あたふたしてる俺と永谷を横目に林田が冷めた口調で参戦する。
「節操ねーな、羽柴。俺ああいう頭の悪そうなタイプはやだね」
「……」
見た目に敵ったクールビューティ。
口調も冷たい……!
あぁそうですね、その通りです。
俺はもう何も言い返せなかった。
落ち込んではいるが反省はしていない。
女の子との出会いは一期一会。
その中でも気に入った子とはエッチしたい!千載一遇のチャンスをも逃したくない!!
……でもわかってる。
クズい……。永谷のいう通りだ。
ショボンとうなだれそうになったその時永谷が林田に噛み付いた。
「モテるお前にはコイツの気持ちなんてわかんねーだろ!そうまでしてヤりたいんだよ、こいつは!」
「~っ!」
俺は慌てて再び永谷の口を塞ぐ。
もう!永谷は俺を庇いたいのか、落としたいのか、どっちなんだ!どっちにしても声がデカいーッ!!
俺が困った顔をしていると風早がやっとここで助け舟を出してくれた。
「まぁまぁ、恋愛は自由でしょ。でも」
一呼吸置いて風早の声音がワントーン下が る。
「琴音って、あゆみと多分対立してるぜ。巻き込まれんなよ羽柴」
「え……そんなこと何で……」
「そりゃあ噂になってるからさ。見境なく女追いかけてると、大事なところ見落とすぞ」
「……う、うん」
もうこれには素直に頷くしかなくて。確かに女子のいざこざに巻き込まれるのは、物凄く面倒くさいと思う。
永谷は俺に向かって満面の笑みでバーカと繰り返した。
結局何だかんだ言ってもコイツらは俺の事を心配してくれているらしい。
「……気を付けるよ」
下を向いた俺に風早が言う。
「しおらしいといつもの3割り増しくらい可愛いな羽柴」
林田が頷いた。
「はっ、んなことねーし!可愛いとか言われても嬉しくねーよ!」
「お、ツンデレか!」
永谷がまたデカい声で突っ込んだ。それを見て笑う面々。そして、このやり取りをあのあゆみちゃんが聞いていたなんて思いもよらなかった。
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