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第13話
こりゃあ多分俺が来ない事を予測してコイツ先に仕事終わらせたんだな。
予想を裏切って俺が来て、残念だったな瀬名!
ふんと鼻を鳴らして顔を背けた。
「んじゃ俺日誌取ってくるわ」
教卓の横に掛けてある掃除当番表と引き替えに日誌を貰うため職員室へ向かうつもりだった。
足早に教卓へ向かい、教壇の上へ足を上げたその時、何に焦っていたのか足がふらつき視界がぶれた。
───あ、ヤバい。
とっさに転ぶと判断した俺は来るべき衝撃に備える暇もなく、ただ目を瞑る。
───あ、れ?
来るべき衝撃は訪れず、俺の手に温かい人の体温を感じ、床の硬さや冷たさをも感じることなく、俺は転んでないと奇跡のような不思議現象に万歳しそうになった。
転んでないぞ……!
「ぅ……」
その代わりに瀬名が俺の尻の下にいた。
「え、なんで……っていうか大丈夫かよ瀬名?」
俺を腹の上に乗せ尻餅を着いているこのまりも男は、まさか俺を庇ってこんな体勢になってしまったのだろうか。
「あー、いてて……慣れないことするもんじゃないね」
あぁやっぱり庇ってくれたのかと思うと同時に何で?という疑問が湧き起こる。
「庇ったの……?もしかして……」
「……いや、とっさのことだから何でこうなったのか俺にもよく……」
ズレた眼鏡を人差し指でカチャリと上げ、瀬名が首を傾げた。モサいコイツが首を傾げても全然可愛くない。止めてくれ。
でも、助かった。
「あ、悪い。……さんきゅー」
俺は慌てて瀬名の上から降りた。あまりに驚いて瀬名の上から降りるのが遅れてしまった。
なんか……瀬名の腹固かった……。乗るのも乗られるのもやっぱり女の子がいい。うんうんと一人頷く。
遅れて瀬名ものっそり起き上がった。
「んじゃ、俺職員室行ってくるな」
今度こそと教室を飛び出る。
職員室への道のりでふと気付いた。
瀬名って案外いいやつなんじゃないかって。
もう少し、普通に接してみようかな。仲良くなりたい訳じゃないが苦手意識だけはどうにかできるかも。
前向きに明るく、誰とでも……。
自分の長所なんてこんなことくらいだし。
やってやろうじゃないか。
───しかしそんな考えは日誌を手に教室へ戻り、一気に吹き飛んだ。
日誌の角で、今すぐコイツの頭を気絶するまで殴りたい!
俺の心なんて知る由もなく、瀬名は机の上で美少女戦士ももにゃんとはまた違う、エロそうなアニメ雑誌を食い入るように見ていた。
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