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第14話
「……キモ」
俺の小さな一言は瀬名の耳にしっかり届いていたようだ。瀬名はチラとこちらに目を向けた。
視線を投げ掛けられるだけでもぞぞーっと背筋に冷たいものが走るのに、瀬名は何故かアニメ誌と俺を交互に見ている。
何なのその見方……!
「っ、きめーんだよ!こっち見んな!!」
思わず本音が口をついて出てしまったけれど、こんな場面誰だってこうなるだろう!?
俺に罵倒されたにも拘わらず、瀬名は反論することもなく、無言でまたアニメ雑誌に目を落とす。
「く……っ(そキモい)」
喉元まで出掛かった追加の罵りをぐっと抑え飲み込む。
あー!もう、ほんとイライラする!
コイツを分かろうとしても、これはもう、絶対無理だ!
「羽柴大丈夫かよ~、あいつと日直とか」
永谷がにやにやしながら面白そうに聞いてくる。
「…べっつにー。やることやりゃあいいだけだし」
何か面白おかしい展開を期待しているんだろうが、そんなものは微塵もない。
瀬名の話をしているだけあって、俺も永谷も無遠慮に瀬名と瀬名の机を取り巻くオタクグループをじとーっと眺める。
恥ずかしげもなくロボットアニメと思われる話題で熱く語り合うアイツらはやっぱり外見から話口調まで独特で、見ているとなんだか胸くそ悪い気分になる。じゃあ、見なければ、聞かなければいい。 そう解っていても、吸い寄せられるように見てしまうのだ。
オタク……恐るべし!
瀬名を遠巻きに見詰めながら朝の出来事を思い出す。
モサイまりも頭で分厚い瓶底メガネでヒゲなんかも子汚い感じに生えているけど、自分より背は高いし、事故って上に乗った時には身体も硬くて筋肉質だった。
あの頭をどうにかして、メガネをどうにかして、ヒゲを剃ればきっと人並みに……。
そこまで考えて、頭をぷるぷると横に振った。
瀬名の机に例のエロアニメ誌を目視してしまったからだ。
やっぱりないない!
どんなに外見を変えたところで中身はコミュニケーションもまともに取れないキモオタ野郎だ。
普通の友達へと前進することはこの先もきっとないだろう。
そんなことを頭の隅で考えていたら、ふと、瀬名がこちらを見た気がした。
俺は無関心を装って目を逸らした。
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