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第17話
あまりの出来事に放心する。
瀬名は外したメガネをなぜか俺に装着した。
さすがにこの厚いレンズを持つ瓶底メガネは相当強い度のレンズが入っているかと思ったが、掛けてみると変に視界が濁った。まるで厚いプラスチック越しに物を見ているような感覚だった。
変なメガネ……。
「これで少しは見えないかな」
「うん……」
はっとした。
瀬名は怯える俺に稲光を見せないようにそうしたのだ。
「ちょっと待ってね」
瀬名は自分の机に戻り、カバンをゴソゴソと漁っている。何かを手にして再び俺の前に座り、俺と目線を合わせた。
直後耳元にガサッと音がして、続けて聞き慣れない音楽が耳へ流れ込んできた。
目を凝らすと瀬名の手にはスマホが。
そこから伸びたイヤホンが俺の耳に刺さってる。
「まぁ趣味じゃないだろうけど、雷の音少しはマシになった?」
認めたくない。 認めたくないけど。
雷なんかに弱ってる俺がもし女なら。
この対応は非常に思いやりに溢れ紳士的。パーフェクト。
そう思って惚れちまうかもしれない。
いやいやそれどころかこの韓流スター顔負けの男前な顔立ちも。
背も高いし体も割とカッチリしてそうだし、いや、頭はもっさりしてるけど、オタクだしなんか気持ち悪いけど。
でも、なんて言うか……。
この行為に俺は少なくとも救われたという認識がある。
「……」
そう、そして色々と驚愕し終えた俺はもう驚かない。耳に流れてくる音楽が、訳のわからないアニメソングだろうとも。
「じゃあ一緒に日誌提出しに行こうか。立
てる?」
「い、いいよ。お前戻ってくるのまってるし……」
雷にビクビク怯えた挙げ句、瀬名に驚愕し通しで、何が何だか混乱した頭を整理出来ないし、心臓もばくばく音を立て、全身がまるで雷にでも打たれたかのようにおかしなことになっていて、一緒に歩きたくない。
「でも、怖いんでしょ」
「……怖くねーし」
強がってそうは言うものの、身体は恐怖に怯えてる。ドーォォンと断続的に聞こえる雷鳴。少しでも耳に入る雷の音を排除したい。音を大きくしようと手元の音量調節のつまみをいじる。
♪ラララ ミラクル マジカル 美少女戦士 もーもにゃん にゃん にゃんにゃんにゃん♪
う、うはぁ。
大音量で聞こえるこの音楽は心身ともに俺の体にダメージを与えそうだ。でも仕方ない。なりふり構っている状況ではないのだ。
「ねぇ、音漏れすごいよ。耳傷めるよ」
「いいから早く行ってこいってば!」
押し問答をしている最中、腹にズシンと響くほどの雷鳴が轟いた。
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