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第22話

あの日のことをバラすと脅された瞬間、パッと目が覚めた。 それはイヤだ。 取り敢えず行けばいいんだろう、行けば……。 まさか金銭要求されたり……しないよな? 「行く。行くけど、俺金ないから。脅して金取ろうったって、ないもんはないんだから無駄だぞ。それだけは勘弁しろよ」 「あぁ。俺犯罪者になるつもりは毛頭ないから。羽柴君と少し話がしたいだけなんだ」 どんな話だよ!とツッコミたいところだったが、ぐっと堪えた。 「わかった。今すぐ行く」 「場所は、地図をメールに添付しといたから。羽柴君の家からだったら自転車で10分くらいだと思うよ。気をつけて」 瀬名は一方的に自分の要件だけを述べてぷつりと電話を切りやがった。 いつもと違う時間帯にバタバタと学校へ行く支度をしていると、母親が不審がって顔を覗かせた。 友達とテスト勉強するから早く登校するんだと説明したら、ぱっと笑顔を見せてコンビニでおにぎりでも買いなさいと1000円札を1枚俺に握らせ快く見送ってくれた。 金が貰えてラッキー!といつもなら純粋に喜べるけど、とてもじゃないがこの時ばかりはそんな気分になれなかった。 金はいらないから俺の平穏を返してくれと心で泣いた。 沈む気持ちを奮い立たせて自転車を漕ぐことおよそ10分。ようやく瀬名のマンションに到着した。 「ホントに10分で着いた……」 マンションの駐輪場に自転車を停めた。 なんだか緊張する。 光沢のある赤茶けたレンガ造り。 目の前のお洒落なマンションと瀬名が結びつかない。 今日はここから登校するハメになるかもしれないと学生服を着用してきた。カバンも勿論持っている。 ただいつもと違うのは、突然の呼び出しに髪型をセットできなかったくらいだ。 外見に命懸けと言っても過言でない俺にとって、起き抜けの無造作ヘアはかなりいただけない姿である。 仕方がないので瀬名の家でセットしようとヘアピンなんかも持参した。 「501……5階の端っこかな」 貰ったメールを頼りにスマホを片手に持ち、エレベーターに乗り込んだ。 あぁ、やだな……。 なんで俺はあの時瀬名に甘えてキスなんてしたんだろ……。 頭を巡るのは後悔ばかりで、さらに瀬名の部屋へと向かう自分に嫌気がさす。 穏便にアレをなかったことにはしてもらえないだろうか。そんな事を考えていると直ぐに5階へ到着した。 部屋番号を見て歩くと、やはり瀬名の部屋はエレベーターを降りて真っ直ぐ右奥の端にあった。

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