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第23話

インターホンを押す指が拒否してるみたいに一瞬押すことを躊躇って、意を決し目をぎゅっと瞑ってエイ!とボタンを押した。 『開いてるよ』 「え、あ、入っていいの」 『入って』 聞こえてきたのは間違い無く瀬名の声だ。遠慮がちにドアを開けると、目の前に見たことのあるモサモサ頭に瓶底メガネのデカい奴が立っていた。 やっぱり瀬名だった。 実はこれは全て夢で、このドアを開いたら目が覚めるとか、そんな夢オチを期待していた自分が哀れだ。 全ては現実。 本当に俺は瀬名の自宅に呼び寄せられたのかと肩を落とした。 まだ6時を回ったばかりだというのに、瀬名も既に制服姿である。 「本当に来たんだね」 「だって、お前があれをバラすとか言うから……」 ブスッとしながら答えると瀬名はクスリと笑う。 「素直で可愛いな」 可愛いだなんて幾度聞いたかわからない。けれど、言われる度にゾッとする。 こいつは恐らく男も恋愛対象で、俺のことも守備範囲内だと思っているのだ。 「靴脱いで上がったら」 嫌な予感しかしないけど、弱みを握られた俺は、事実弱い……。 仕方無く靴を脱いだ。 「お邪魔します………」 「ちょっと散らかってるけど、男の一人暮らしなんてこんなもんでしょ」 全体的に生活感が感じられない。 玄関もコイツの靴と思われるローファーと、スニーカーの2足しか置かれていなかった。 居間へ案内されたが、殺風景なことこの上ない。 テーブルに椅子、テラスをバックに大きなソファー、テレビ台には大きな液晶テレビが乗り、テレビ台の収納箇所にはゲーム機があるだけだ。 キレイというより、やっぱり生活感が無いといった方がしっくりくる。 なんか変だな。 なんでこんなところで一人暮らしなのか疑問に思う。 実はどっかの財閥の隠し子で、存在を隠すために一人暮らしを余儀無くされた……とかやんごとなき事情みたいなものがあったりして。 しかしどんな理由があろうとも俺には無関係だ。面倒事に巻き込まれるのもゴメンだし、聞かないでおこう……。 それに瀬名は美少女アニメオタクだから部屋は当然そういったグッズで埋め尽くされているとばかり思っていた。 しかし壁紙だけでなく、部屋全体が新築並にキレイなままだ。 何となく拍子抜けした。 「どうぞ、座れば?」 「つーか……意外。なんかキモーいオタクグッズで溢れてんのかなって思ってたから」 「あぁ、別の部屋にあるよ。見たいの?」 やっぱ、あるんかいっ! 「や、いい。いいよ。俺にはその良さがわかんないからさ」 「そう。ならいいけど」 「それより俺に何の用があってこんな朝っぱらから呼び出したんだよ」

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