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第26話
弾力のある唇とフワッと香った瀬名の匂いがあの雷雨を思い起こさせる。
「……っふ、ん」
瀬名のキスは強引だったけど優しかった。
無理矢理乱暴に舌をねじ込んできたりなんかしない。
今まで散々俺を脅してきたクセに。
あの時のように唇で啄むみたいなキス。
がちがちに固まった体が角度を変えて唇を合わせる度、次第に解れて柔らかくなっていく。身体からふにゃりと力が抜けていくようだ。
人は見た目の9割で印象が決まるとかいうけれど、分厚い眼鏡のオタクでまりもなヤバい奴が、実は美青年だという事実で実際180度見方が変わってしまった。
現にキスしてるこいつが、あの瀬名だとは思えない。最初はキスすら冗談じゃないと思っていたのに、憧れを抱くほどの整った顔で俺の唇を優しく啄んでいる。
目を閉じてしまうとこのキスがスゴく気持ちよかった。
固く閉じていた唇のガードが緩んだ時、瀬名の手が耳朶に伸びてきて、耳裏を擽られながら下唇を軽く噛まれ、ゾクリと甘い感覚が駆け上がる。
「んにゃっ……」
なに?今の声!?
……!!んにゃって!!猫じゃねーんだから!
恥ずかしい……!!!
気付くと覆い被さっていた瀬名が、くすりと笑った。
妙に大人びていて色っぽい。
「キス、気持ちよかった?」
瀬名は俺の耳に唇を寄せて囁いた。
「ぁっ、や、耳元で喋んない、で」
囁きと吐息が耳に注がれ、ツキン、と下肢が疼いた。
ヤバい、俺おかしい。
なんでどうして。
こんなヤツとのキスなんかでなんで。
事態が飲み込めず混乱した。
「ね、すごい。羽柴くん可愛い顔してるけど、ちゃあんと硬く大きくなるんだね」
「やだ、触んなっ……いやっ」
こともあろうか、スラックスの上から膨らんでしまった中心部分をすっと撫でられ腰が跳ねた。
まずい、本気でまずい。
瀬名がどれだけ実は美男子であろうと、ダサいマリモでキモくてヤバいオタクであることに変わりはない。
そんなヤツに触られてイかされて……なんてことになったら!
「瀬名、瀬名っ!」
「なに。待ってはもう聞かないよ」
「いや、じゃなくて……その、最終的にどうなればお前は満足すんの」
だってやっぱりこんなのおかしいだろ。
俺は至って健全な男子高校生で、恋愛の対象も肉体的な欲求の対象も、女の筈だ。
こんな瀬名の下でふにゃふにゃになって、キスされて下半身まさぐられて喘いでるなんて……こんなの、こんなの、俺じゃない!
願いが叶えば満足して俺への興味も薄れるのか?もうわかんねえ。
頼むから解放してくれ……。
「そうだなぁ。俺の下で可愛くオネダリしながら、にゃんにゃんを語尾につけて可愛く喘いでくれれば、まぁ今日のところは許してあげてもいいけど?にゃん?」
「なに……それ……」
くらくらと目眩がしそうだ。
にゃんって語尾につけろとか、一体何プレイなんだ。
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