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第27話

「どうする?羽柴くん?」 どうするも何も、今だってこんな風に上から押さえつけられて逃げようにも逃げられないし、キスしたことをばらすと脅され、拒否した日には間違いなく学校中の笑い者だ。 「……っ、くそっ!わ、わかったよ!やりゃいいんだろ!」 もうヤケだ! とにかく一刻も早くここから立ち去りたい気持ちが勝った。 「“にゃん”は?」 「っ……、にゃ、にゃん……」 くそ……!こいつマジで地獄に落ちろ! 「いい子だね」 ゾクリ……と、肩が震えた。 男の強いフェロモンみたいなものを感じた気がして、俺はこの後本当にどうにかされるんだと本能が危険信号を発している。 けれど目の前に迫る瀬名の素顔は見とれてしまうほど整っていて危険信号も薄れていく。 心臓が次第に大きく波打って、涼しげな眼差しに捕らえられるともう抵抗する気は失せてしまった。 瀬名は俺を見下ろして唇をペロリと舐めた。まるで肉食動物がそうするみたいに。 そしてまた重なる唇。力の抜けた俺の唇を割って舌が侵入する。 「……っん、っ」 俺に舌を絡めろとばかりに口内で挑発されて、俺もおずおずと舌を差し出した。 ぴちゃ、ちゅ、と唾液の絡まる音が生々しくてぞくぞくした。 いつもだったら自分が上になってリードする筈が組み敷かれて興奮している。 信じられなかった。 熱く力強く傲慢に動く、舌。 捕食者のような目。 広い肩幅に程よく厚みのある胸板。 強い男の匂い。 どれをとっても到底適いっこないと思い知らされる。 そんな奴に体の自由を奪われて身体は気持ちいいことがしたくて期待していた。 最悪。 後はもうなし崩し的に流された。俺の身体が同性相手でも快感に弱いと初めて知った。 絡まる舌と口内を擦られる感覚が気持ちよくて、更にその先を期待する。 敏感なところを触って欲しかった。 「腰揺れてるけど?俺にオネダリしてごらん、羽柴くん」 唇を離すと瀬名がそう言った。 激しい瀬名のキスに呼吸を乱され、涙を目に滲ませながら途切れ途切れの息遣いで俺は答えた。 「せ、な、触って……」 「どこを?」 意地悪なヤツ。 陰湿でエロくて最低。 俺は涙目で押さえられていた手首を持ち上げた。そのまま瀬名の手を掴み、自分のスラックスの上に引っ張った。 「触って、ここ触って……なぁ、瀬名」 瀬名の目がぎらついてるのがわかる。 荒い息を殺して我慢しているみたいだった。 こいつはすげー変態だ。 ……その変態に身体を差し出している俺も人のこと言えない。 「羽柴くん、にゃん……って、付けて」 「っん、ぁ」 瀬名はそう言いながら布越しに俺の盛り上がった中心部をするっと撫でて、ファスナーを下ろした。 「瀬名……」 俺はどういうつもりだったのか。 俺なんかに欲情した瀬名の首を引き寄せて囁いた。 「触って……瀬名、俺の擦って欲しいにゃん、瀬名、エッチなことして欲しいにゃん……」

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