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第29話
風早が苦笑いしながら口を開く。
「いやぁ、俺ほら好きな子いるし。合コンなんて好きな相手に印象悪くするだけだろ」
林田は黙って頷いた。
「えーーーー!」
俺と永谷は見事にハモったのである。
でも言われてみれば風早には好きな人がいて一途に思い続けているのだから、合コンなんて、というのは真っ当な意見だ。
風早だったらイケメンパワーで可愛い女子を集めてくれるに違いないだろうと勝手な思い込みをした自分が恥かしい。
ふてくされる俺と永谷を見て風早が笑う。
その後始業のチャイムがなり、俺はまた瀬名と風早に挟まれてイヤイヤ一日を過ごす のだった。
幸いにも瀬名の一件から数日。ヤツからは何の連絡もなく少し気持ちが落ち着いた。
ネコ耳着けてにゃんにゃん鳴かされて、それをネタに更に脅されてもおかしくないようなことしたのに……。
瀬名は大人しい。相変わらず頭はモサモサで瓶底眼鏡をかけ、ふと気付くとその眼鏡が曇っていることもあった。相変わらずの気持ち悪さだ。素顔がイケメンだったなんて忘れてしまいそう。
癒やしはないが、平和ではあった。
しかし平和=退屈でもあった。
そんな折、またしても琴音ちゃんからアプローチがあった。
何でだろう。琴音ちゃんからは嫌な感じがしていたのに。
多分俺はあれ(瀬名との一件)以来、男としての自信を取り戻したい気持ちが強くなったのだろう。
思わずOKしてしまったのだ。
「今日はうち親いないよ?」
揺れるおっぱいに誘われるがまま、電車に乗って琴音ちゃんの家まで来てしまった。
琴音ちゃんの家はごく一般的な一戸建ての建売住宅だった。
新築らしく外観はとてもきれいだった。キレイな家だねと伝えると琴音ちゃんはそんなことないと謙遜しながらも喜んでいた。
だけど目的はただ一つ。
キレイな家だろうがぼろい家だろうがホテルだろうが、正直どこでもいい。
エッチしたいだけだから。
エッチがどうしてもしたいという訳ではなかったが、自分の下に女の子を組み敷くことで、瀬名とのあれこれを払拭するのが目的だった。
琴音ちゃんも俺とそうなりたいみたいだし、好都合だ。
一刻も早く、アイツを忘れたい!
「お邪魔します」
家へ上がり通されたのは琴音ちゃんの部屋だった。リビングを抜けて階段を上がった突き当たりの部屋。
日当たりが良さそうだ。そして部屋の中は琴音ちゃんのイメージに合う白とピンクを基調とした家具や小物でいっぱいだ。
「すげ~……」
ここまでピンクピンクした部屋を見たことがなくて少し驚いた。
壁紙はピンクの小花柄。カーテンもレーシーなピンク。机やドレッサー、棚は白だけどベッドカバーもピンク。毛足の短いラグマットまでピンクだった。縫いぐるみも数多く置いてある。
「今飲み物とってくるから、くつろいでてね」
「あ、うん」
とは言ったものの、落ち着かない。恐らくこの部屋の色のせいだろう。
ほんと女子ってわかんねぇな……。
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