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第32話

答えたと同時に琴音ちゃんの腕が伸びて、ジャキッと布が切れる音がした。 「っ………!」 「好きよね?トモくん?」 ハサミが飛んできた先を見れば俺のワイシャツに穴が空いている。 怖い……!琴音ちゃんあぶねーっ……!刺されはしないと思っていたけど、まさか服を切るとか想像できないだろ! 「答えてくれるまで、これ切っちゃうんだからーっ」 ジョキジョキと、俺が動けないのをいい事にワイシャツに穴を空けていく。 でも好きって答えたらどうなるんだ。そもそもこんな病んでるヤバい女なんか好きじゃない。 「あっはは、おっかしぃの!」 俺がどう答えようか迷っている間に琴音ちゃんはハサミを進めて、こともあろうか俺の両胸周辺を丸く切り取り、乳首を丸出しにしたのである。 「おかしいのはてめぇの頭だろう……」 ボソッと呟いた声はしっかり琴音ちゃんの耳に届き、琴音ちゃんは益々逆上した。 「大体あゆみが悪いのよ!先にどっちがトモ落とせるかなんて持ち掛けてきて、勝負する前にもうやっちゃってるんだもん!」 最早俺の名前は呼び捨てだ。 それにしてもこの二人がそんなカケをしていたなんて。でもカケなんて一種の遊びだろう。 どうしてそこまでムキになる必要がある? 俺には理解できなかった。 琴音ちゃんは俺のシャツを切り飽きたのか、スラックスにまで手を伸ばそうとする。 「ちょっと待って、琴音ちゃん、これって犯罪じゃねぇ?人のシャツ切り刻むとか」 「何なら琴音のシャツ切り刻んで下着姿であんたにやられたって叫んでもいいんだよ?」 「……」 琴音ちゃんの方が一枚上手のようだ。 「あゆみ以上のことしてくれればいいの。出来ない?出来るよね?」 琴音ちゃんは俺のスラックスを摘んでハサミを入れようとしている。シャツだけならまだしも、下も切られたら外に出られない。というか帰れない。 既にこの乳首丸出しワイシャツが、あまりに変態くさくて通報レベルだ。 琴音ちゃんは血走った目でうっすらと微笑みを浮かべ、正気じゃない。 俺、どうする、どうする!? 「琴音ちゃん……!」 考えに考え抜いて、俺はその場に土下座した。 頭をピンクのラグマットに擦り付けて。プライドを捨ててでも、この場を丸く収めたかった。 土下座なんてある意味あゆみちゃん以上だろう。これが琴音ちゃんに伝わるかは不明だけど。 長いようで短い沈黙が続く。

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