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第35話

ん?乳首? 「……っ!!」 瀬名の視線を追うと琴音ちゃんハサミで晒された俺の乳首がコンニチハしていて、男同士でどうのとかそんなことは抜きにしてもあまりにこれはカッコ悪く狼狽えた。 恥ずかしくて顔がぼわっと熱くなり反射的に手で乳首を覆い隠す。 何がパーフェクト!!だ!! 男のクセにピンクの乳首とか、実はコンプレックスだったりするのに。 ばかにしてんのかっ!? それにしたって、くっそ、うわぁぁ、何だこの恥ずかしさ! 思わず両手で隠してしまったが、それはそれでまた恥ずかしい。 多分俺は今、真っ赤になっている。 「せ、瀬名、死ね、変態」 「どこもかしこもピンクだね。本当に羽柴くん可愛いな。正直今すぐにでも押し倒したい」 「やだ、絶対嫌だ!……にゃっ」 カリ……と耳朶を甘噛みされて変な声が出た。 「じゃ、帰ろう」 フワリと上着をかけられて瀬名の香りがふわっと漂う。 黙って俺達を見ていた琴音ちゃんが「忘れ物」と言って窓から俺のカバンを投げ落とす。すかさず瀬名がそれをキャッチし上を見上げた。 「……」 「まさかホモなの?……バッカみたい」 「いや、それは誤解……っ」 琴音ちゃんは誤解している。 瀬名はどうだか知らないが、俺はホモではない。そう否定しようとした。 しかしすぐさま窓は閉められ弁解の余地はなかった。 瀬名は自転車でここまできていた。 道の端に寄せられた自転車は乗り捨てられたみたいにブロック塀に乱雑に立てかけられている。 少し複雑な気持ちになった。 「チャリでここまで……大変だったろ」 瀬名が危険人物とは言えど、俺の為にここまで来てくれて助けてくれたことには感謝したい。 しかし、同時に瀬名が俺にしたエッチなことなんかも思い出され、それらがぐちゃっと頭の中で入り混じった。 ……純粋に好意で来てくれたとは考えにくいけど。 「一駅くらい自転車漕ぐのなんて余裕だよ」 そう言いながら俺のカバンを自転車の前カゴに入れる。瀬名は先にサドルを跨ぐと後ろに乗れと俺に言った。 「行くよ、しっかり掴まって」 自分でも説明出来ない気持ちをぐるぐるとさせながら、俺は瀬名の背中のシャツをぐっと握った。 自転車はゆっくりと動き出す。 辺りは夕方でもまだ明るく瀬名の上着がなかったら俺はどうやって外を歩いていたんだろうと思う。と、同時に。 少し冷えてきた頭が疑問を呼び覚ました。

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