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第36話

自然と声のトーンが下がった。 「……なぁ」 「何」 「何で琴音ちゃんちに俺がいるって知ってたんだ」 「……」 「それに場所まで」 「……」 「録音って何」 「……」 瀬名は無言でシラを切るつもりなのか。 「……教えてくれないの?」 しばらくして瀬名が口を開いた。 「教えるもなにも察してるよね。その通りだよ。GPSの付いた盗聴器、羽柴くんのカバンに仕込んだんだ」 やっぱりか。 「……もう別に驚いたりしねぇけど。何で?」 「……」 瀬名は答えない。 「まさかストーカーしたくなる程俺のことが好きだったり?」 「……それはない」 「……」 ハッキリと否定された。 何故かわからないけど、一瞬頭が真っ白になった。 スッと頭が冷めていく感覚。 俺は、俺は……。 一体どうしたんだろう。呼吸が浅くなり胸の辺りが苦しい。 瀬名、コイツは一体何を考えて俺に関わってくるんだ。 目の前の信号が赤に変わり自転車が止まる。瀬名が振り向きざまに言った。 「俺のうちに寄っていくよね?」 「え……」 言葉の意図がわからない。 「そのシャツで帰る?」 「あ……」 思わず上着の中を覗いた。切り裂かれたシャツは普通じゃ到底考えられない刻まれ方で、確かにこれは家族にすら見せられない。 「俺のシャツで良ければ貸すよ」 「……別にお前のシャツなんかなくても平気だから」 「ふーん」 素っ気ない瀬名の返事に感情を読みとることも出来ず、俺は足を下ろして自転車が進むのを阻止した。 ザッと足が地面を擦る音がして瀬名が再び振り返る。 「どうしたの」 「……もう、この辺から歩いて帰れるから」 「そう?じゃ、これ」 自転車を降りた俺に瀬名は俺のカバンを手渡した。そして瀬名は行ってしまった。 振り返ることもなく。 何故か鼻の奥がつんとして涙が零れた。 「何なんだよ一体……」 優しくされたかと思ったら突き放されて、あんなオタクで変態な奴、最低最悪だ! なのに何で! 「お、オタクのクセに、男のクセに、変態のクセに……振り回すんじゃ、ねーよっ…… ふぇ、ぅ~」 涙が次々と零れ落ちる。人目も気にせず泣いた。 本当は、好きと言われたかったのだろうか。 何がショックで何が悲しくてこんな気持ちになるのか理解できない。 好きでもないのにどうして助けたんだ。 手の甲で涙を拭うが、拭っても拭っても、すぐに溢れてしまう。 本当は瀬名の背中に……しがみつきたかった。

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