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第37話
家にたどり着くまでに涙は乾いて頬にその痕を残した。
瀬名に借りた上着のお陰で家族にボロボロのシャツを見られることもなく自室で着替えることはできたが、それよりも瀬名に好きじゃないと示されたことがショックで仕方なかった。
風呂に入り、体を洗って温かい湯船に体を浸けると少し気持ちが落ち着いて、今日のことを冷静に思い返すことができた。
琴音ちゃんにされたことが自業自得だったとわかり敵意剥き出しでハサミを向けられ、それが女の子だとわかっていても怖かったし、そこに現れた瀬名にときめいてしまったのは事実だ。
ひどい雷雨の日も、今日も。
「俺気持ち悪いな……」
まるで瀬名に恋する乙女みたいになっている自分が気持ち悪い。
俺はあいつなんか元々嫌いで、男なのに体を弄ばれ益々嫌いになったはずだった。
それなのに、あんなことでショックを受けて、まさか声を上げて泣いてしまったなんて。
こんなの変だ。
好きなのか?瀬名を?
いや、そんなことはあり得ない。
流した涙の訳を探してしっくりきたのはこれだった。
「友達に裏切られてショックを受けた……んだな、多分」
瀬名のことを友達と思ったことはこれっぽっちもないけどな。
翌日。
琴音ちゃんも瀬名も、もちろん俺も何事もなかったかのように学校にきていた。
そして少し引いた目線で見ると今まで見えていなかったものが見えてきた。
琴音ちゃんはいつもあゆみちゃんを目で追っている。
あゆみちゃんはしょっちゅう俺を見つめてる。
そして瀬名は相変わらず机の上で2次元の美少女を眺めているけど、瀬名を取り巻くオタク仲間は、俺や永谷、風早と林田を見てはコソコソ何かを言っている。
俺のことを瀬名がばらしたのかもしれない。
結局つまりは嫌われてるってことだろう。
そして俺は……。
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