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第41話

俺ってやっぱり最低かもな。 気持ちが動かないんだ。 あゆみちゃんには悪いけど、関係したことなんて本当にただやっただけって感覚で何の感情も湧かないんだ。 遊びでエッチができちゃうんだから、あんなことになっても仕方ない気もするし反省もしてる。 でも、あゆみちゃんがいようがいまいが、どっちでもよかった。 ただ気になることと言えば。 俺は琴音ちゃんの姿を探した。 ほらやっぱり。 ベランダ側の壁にもたれてこっちを見てる。 俺には琴音ちゃんの気持ちのベクトルがあゆみちゃんに向かっている気がしてならない。 琴音ちゃんはあゆみちゃんの気を引く為に、そして半分は俺に対する嫉妬であんなことしたのかなって推測した。 するとしっくりきたんだ。 琴音ちゃんのあの時の言動、考えれば考えるほど、そうなんだと確信する。 必至さは十分に伝わったよ。 琴音ちゃんは恐らくあゆみちゃんが好き。 ラブとは言い切れないまでも、ライクよりもっと強く、より深く。 同性同士だってそんな気持ちが存在してもおかしくない。 ほんの少しだけ、似たような気持ちを知っているから琴音ちゃんを応援したくなったのか、俺は席を立って琴音ちゃんのもとへ向かう。 「琴音ちゃんも海、一緒に行かない?あゆみちゃん来るよ」 琴音ちゃんの顔色がパッと明るくなり、黙ってこくりと頷いた。 永谷、風早、林田はこっちを見てあからさまに眉を顰めたけど。 女大好き。 これ元々俺の特性だし。 いいじゃん別に!女の子多い方が盛りあがるって! そう言えばみんなしょうがないなって顔してくれた。 永谷にはハーレム作る気か!お前いつかチンコ切られるぞって突っ込まれたけどな。 そして、もう一つ。隣の席の瓶底メガネ。いつも取り巻きとエロそうなアニメのオタク雑誌を広げてるアイツはこの時ばかりは俺を見ていた。 琴音ちゃんと接触しているのが気になったのだと思う。 瀬名がこっちを見てる。 見られてると思うだけで気持ちが高ぶる。 ただ瀬名が俺を見て何を思っているのかなんてわからなかった。 瀬名の気持ちを推し量れない。 あゆみちゃんとか、琴音ちゃんとか、女と仲良くしてるんだ。 ちょっとは嫉妬してくれたりしないのかなと思ったり。 けれど全然、瀬名はこっちを見ているだけで。 悔しくなって下唇の裏をぎりっと噛んだ。どうせ八方美人だろうと思われているのではないだろうか。 ある種の開き直りで俺は覚悟を決めた。 そうだよ、俺はみんなに気を使えるいいやつだ。 だからコイツらにだって声をかける。 いつもより少しテンション高めに。 断られてもノリで、え~残念~って返せるように。 自分の席に戻るとガタンと音を立てて瀬名に体を向ける。すると瓶底眼鏡の瀬名とオタク仲間のぽっちゃり河野、色白眼鏡の八雲、青春ニキビ冬水田が一斉に俺を見た。 「なー、夏休み一緒に海行かない?」 ニッコリ笑って言う俺を見て風早達はアングリと口を開けた。

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