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第42話

俺達と海なんて行く筈がないと思っていたが予想を裏切って瀬名達は「どうする」と顔を見合わせ相談する。 「そうだ。夏休み期間限定で魔法少女シリーズのコスプレ喫茶が海の家として出店するらしいぞ!ここから行くならこの浜辺だよな。だとしたら泊まりで行くのも悪くないな」 「うそっ、ボク行きたい!」 「そうそう、ここに載ってるわ」 ぽっちゃり河野が雑誌をパッと広げて見せた。 「水着か……。海、水着……」 ぶつぶつと呪文でも唱えているかのような瀬名を見て、八雲が「どうしたの?」と口を開く。 「いや、なんでも」 「そう?なんか気持ち悪いよ」 確かに気持ち悪い。 あいつは仲のいい友達にまでそんな風に思われているのか。 ちょっとだけ不憫に思った。 「よし、行こうか」 決定権は瀬名にあったのか、奴が口を開くと、連中はイエーイと何故か謎のハイタッチ。 ハイタッチすらどこか異様に見えるのはオタクに対する偏見だろうか。 「うわ、マジで行くのかよあいつら」 永谷なんかはすこぶる嫌そうな顔をしていたけど、勢いで誘っちまったもんはしょうがない。 「いいじゃん。人数多い方が楽しいし。っていうかあいつらパシリとして使えばいいじゃん」 「パシリ?おお!なるほどな!」 単純な永谷は面倒事を瀬名達に押し付ければいいと考えたのか、ぐーにした手で反対の手のひらをポンと叩いた。 風早と林田には何かあったら俺が責任とるからと許可してもらった。 まさか本当に瀬名がついてくるとは思わなかった。 胸がそわそわする。 直後チャイムが鳴り自分の席についた。 「……羽柴、瀬名と何かあった?」 ドキッとした。 風早が急にそんなことを言ったから。 まさか……。風早は俺と瀬名の空気の変化を感じ取っている? 気付かれるような何か……あったっけ? 「へ?あるわけねーじゃん。からかいがいのある奴いたほうが面白いと思っただけだよ」 「……そういうことにしといてやってもいいけど。何かあったら俺に言えよ」 んんん。風早の鋭さ……侮れない。 あゆみちゃんの事といい、風早の第六感みたいなものはどこからくるのだろう? ドキドキした。 俺と瀬名の関係を疑われているみたいで。 でも、あの瀬名と俺が、まさかあんなことになっているなんて誰にも想像つかないだろうし、言ったところで誰も信じはしないだろう。 瀬名だって旅行中に俺とどうにかなろうなんて気は起こさないだろう。 そう願いたい。 きっと大丈夫だ……。 不安もあったが瀬名と旅行に行けることか、俺を浮き足立たせた。

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